2012年10月2日火曜日

土佐日誌弐


ノンビリとした時間が高知県の辺境にて流れる。 




一日の流れとしては 

①猫に起こされる 
②1階でコーヒーと何かを食べながら雑談 
③猫の散歩に付いていく 
④夫さんが夕方に帰宅 
⑤蓄音機を鳴らしたり、楽器を鳴らしたり 
⑨PCを開こうとして猫に邪魔される 
⑩楽器の練習 
⑪猫と『猫ジャラシ』にて激しく遊ぶ 
⑫猫6匹が寝たところで私も寝る 


・・・だった気がする。しかし『③猫の散歩に付いていく』だが「猫なんて勝手に遊びに行くだろう」と思っていたら変な猫達で集団行動がモットー。山奥なんだが『猫ジャラシ』で見せる華麗なるジャンプは野外では全く役に立たず、可也、不安そうな顔で外に出るのである。 

夜なんて本当に真っ暗だから猫でもビビるレベル。 

でも、普通、猫って夜行性だから暗くても平気なはずだが懐中電灯が光っていない場所だと「怖いから動けないー!」とニャーニャーと助けを求めてくるのである。 

で、呼ぶと来る。 

「怖かったよー!」 

みたいな。 

帰宅すると「あー!今日もダイナミックだった」と言うか「ホッ」みたいな表情。 




久し振りの来客で、尚且つ其の来客が奇妙な黒い箱から何かを取り出す。彼是と箱の中を弄って黒くて丸い盤を回してハンドルを回すと音が出る。 

それは歌だったり、オーケストラだったり、弦楽三重奏だったりするのだけども結構、心地よい。 

その来客はフェルトで出来た袋を大事にしている。その袋を開けると銀色のクネクネした管が出てくる。来客が其れを口につけると音がする。悪くない。 

来客がCDプレイヤーを弄ると面白い音がする。思わず寝てしまう。 

来客はついでに小さな箱を持っている。箱にはフォークみたいな鉄板が幾つもあって、来客が其れを弾くと気持ちの良い音がする。 

来客は何故か自分達の名前を知っている。 

時折、名前を間違えるが、どうやら皆の事もある程度、知っているらしい・・・。 

この来客は、どうも自分達の新しい兄弟らしい。毛並みは随分と違うが似たようなもんだろう。6匹よりも7匹。多い方が良いに決まっている。 



・・・と言う事なのか猫達には初日は既に認知されたみたいで朝、起きると手が傷だらけ。どうやら朝、起こしに来たのだが余りにも起きないので腕をガジガジと引っ掛れたらしい。多分、犯人は何事もTOPバッターで好奇心旺盛な虎猫であるマーチンである。 

で、起きた事を確認したらボス格の猫が「ようこそ!大杉へ」とばかりにキスの応酬。キスって言うか本当に唇をベロベロと舐めてくる。飼主女性はディープキス状態となってしまうらしいが、其処はボス猫はオスなので『一線』を越えないように舌は入れさせない。 


で、起きてコーヒーを飲む。普段ならば缶コーヒー5本を飲む私だが山の中にある家なので自動販売機まで徒歩20分掛かるのである。必然的にコーヒー。 

で、カリンバを弾いて猫がウニャウニャと横になる。飼主女性とノンベンダラリと話す。 

ついでに猫も食事しながらウニャウニャと話す。猫の話を聴く。 



PCでメールチェックをしようとすると猫が「ここではIT禁止!」と大々的に宣言。 


(邪魔するマーチン)


この一匹をどかしてPCやれば良いじゃないか?と思われるだろうが6匹いるのである。一匹をどかしても次から次へとやってくる。終いには強制シャットダウンまで食らう始末。 


仕方がないので以前、この友人女性に送った『羊毛フェルト猫:ヨシダ君』の修理でもするか、と思い猫に齧られたヨシダ君を見せてもらうと、机の上にゴミがある。 



「こんな処にでっかい埃と言うかゴミが・・・」 



と思ったら、其れが私が2日間かけて作った羊毛フェルト猫ヨシダ君だった。首は捥げているし、腕は切れているし、体毛は全て剥ぎ取られている。 



2日間、悩んだ挙句、修理は不可能であることが判明し腕と首と胴体の半分以上と体毛を作る。 
と言うか、作り直した、に近い。 



余った羊毛で猫ジャラシを作ったら猫達が喜んだ。 





夕方には夫さんが帰宅して直ぐに食事となる。農業をやっているんだが、農業従事者と言うのは其れまで知らなかったが作る量の4倍のカロリーを消費しないと持たないらしい。 



其れを知ったのは北朝鮮の食糧事情を話していた時なんだが、北朝鮮が何とか国家として復活する確立は限りなく0%らしい。つまり食料を作る以前に、その食料を作る為の食料がない為、完全に悪循環の極みで諸外国からの『お恵み』を食う以外に何もないのだが平壌市民と一部の特権階級以外は其の食料を食べる事が出来ない為、どうしようもないらしい。武器などを輸出しようにも北朝鮮が保有している武器ってガラクタと言うか骨董品でしかないらしく誰も買い手が付かない。ロケットは失敗。核兵器も失敗。土地は完全に枯れているし、食えるものは人肉だけ(実際に人肉食禁止令が出たが余り守られてないらしい)。 





なので炊飯器には炊飯器の限界量に近い量のお米が入っている。最初に炊飯器を見たときは驚いた。 



「誰が食べるんだ?この量!」 



と思ったら旦那さんだった。私の3倍のスピードでご飯を食べ、私の3倍以上の量を食べ、私の3倍の体格(肉体労働だから)。 




「食べるシャア・アズナブルか!」 



「大杉の赤い彗星」(実際に職場で愛用しているトラクターは赤色) 



「昔は豊満な体つきだったが、今は痩せている。きっと『マスクをしている訳は分かるな、私は過去を捨てたのだよbyシャア』と言うのだろう・・・」 




と思った。ここまで来ると『茶碗』なんて言う生易しく、生温く、女々しいモノは使わない。 





ドンブリ 





である。 



夫「おかわり!」 



妻「どのくらい?」 



夫「いっぱい!」 



とドンブリに大量のお米が注ぎ込まれ、鯨のように食べる。ダイナミックな旦那さんだった。 




そんな旦那さんが私が滞在中にアルト・サックスを始めた。ホンッと箱から開けたばかりの状態だったのだが体格が鍛え抜かれているので初心者とは思えないほど馬鹿デカい音を出す。普通は其処までデカい音は出ないのだが、体格なんだなぁと思った。 



因みに私は大音量の演奏が出来ない体型で、其れで悩んだ挙句、エフェクト・トランペットになった経緯があり、羨ましい。一般的にジャズとかってアコースティックでの大音量っぷりが肝でもあるし、 






本当は19日には東京に戻る予定だったのだが猫と飼主の引き止めにより24日になった。と言うか、情報が結構、シャットダウンされている状態で雨が降ればTVは映らないし、PCを開けば猫が「掟に反している!自己批判せよ!」と怒鳴られるし。 





しかし、其れが凄く心地よい。 



夜になると明かりが点いている私の寝室へ猫がまずは一匹で様子を見に来る。「まだ、起きてんの?」みたいな。 



私は漫画を読んだり、ボンヤリしていたり。 



猫が来たので猫ジャラシで遊んでいると下で寝ていた猫達も「なんか上で面白そうな事があるらしい。多分、先日、来たお遍路さんが何か面白い事をしているに違いない!」と猫が次から次へとやってきて最終的には6匹全員を相手に『猫ジャラシ』で華麗なる跳躍と、激しい運動。 



興奮が極みに達すると私の足を齧ったり、トランペットケースを齧ったり、布団を齧ったり。時折、私の顔目掛けて飛んできたり(押し倒される)。 




で、朝の4時ごろに寝る。 




其の前に猫を寝かしつけなくてならないので猫6匹を寝かしつける。 



私も寝る。 




素的な夜が毎日続く。 





外から聴こえて来る音がまた素晴らしい。ビデオモードで撮影したのだが真っ暗なので音だけだけども、之が大豊町大杉の夜の音。


出来れば音量はマックスで聴いて欲しい。ホンと大音量でこの音なんである。 



体質なのか、どうしても1の情報から100の情報を引っ張り出してしまう。其処に疲れる。で、この土地では1の情報から100の情報を引っ張り出したとしても「之を買え」「秋のファッション」「これをやれ」等の指示はなくて、「そのまま」がある。 

心地よいなんてもんじゃない。 


そう言えば飛行機の中で沖縄観光のCMが流れていたが、沖縄も悪くは無いが既にあの土地は多分、都内と大して変わらない気がする。 

『世界経済』 
『経団連』 
『グローバリニズ経済』 

の中にある、と言う気がする。「ここは豊かな大地!」みたいな感じだけども、観光地化してしまった文化は音速で腐る。 

一度、沖縄に行った際に購入した60年代の琉球音楽のEP盤を好んで聴いていたが、今とは随分と違う。 

あとはメンヘラ御用達みたいな宿屋があったり。 

個人的には二度と行きたくない土地である。 



この集落にはホンと何もないんだけども、何もかもが揃っている。其れは私が『お遍路さん』と言うか『来客』として東京から来た、と言う事もあるけども、其れを差し引いてもそうなんである。 

因みに私を招待してくれた(猫DJのオーガナイザー)友人女性は都内~栃木では奇行三昧だったが高知県の辺境で猫と暮らし始めてから『憑き物が落ちる』と言った具合に落ち着いた。 

奇行三昧の時期のことは覚えてないらしいので 


「北朝鮮に国賓待遇で行きたい!って言ってましたよ」 

「え?!」 

「言ってどーすんですか?って聴くんですけど『どうやったら良いんだ!あ!北朝鮮大使館に行けば良いんだ!』って言ってました」 

「北朝鮮大使館?!」 

「でも日本と北朝鮮って国交はないでしょう?(裏ではキチンと国交はあるが)だから『日本に北朝鮮大使館はないですよ。朝鮮総連はありますけども、多分、可也、ニュアンスは違うでしょうし』と言うと『ちくしょー!』って怒鳴っていました」 


と今では笑い話をワインを片手に話す。 




そう言えばメス猫の『メロネちゃん』と言う猫が発情期に入った。産まれて初めての発情期。本人は男性ホルモンに小さな胸がドキドキしちゃうみたいで私や旦那さんに「うっふん」と来る。 
オスの発情期はメスに誘発される形なのでオス2匹はメロネちゃんにドキドキ、ワクワクしている。 

時折、メロネちゃんに噛付いて『行為』を果たそうとするのだが、性欲は本能だが、テクニックは理性って感じで噛む場所を完全に間違えており(普通は首筋)、メロネからは「何するのよ!痛いじゃないの!」と猫パンチ。 

で、オス猫は「とほほ・・・」と項垂れる。 

結果的にメロネちゃんは「飼主~!ブルーが苛めるの!」「お遍路さぁ~ん!アイツが苛めるの!」と此方に来る。 

振られたオスと目が合う。 

「男って辛いよなぁ」 

と言うと「お前に判ってたまるかー!」と弾けるはずも無いギターを取り出し、尾崎豊を絶叫して何処かへ消える。 

暫くすると一緒に仲良く寝ていたりする。 



来客ってのは刺激的なもんである。昔の日本にやってきた黒船みたいなもんだろうか。しかも音は出すし、音が出る機械も持っているし、親戚のお兄ちゃんみたいに夜遅くまで遊んでくれる。 


「メロネちゃんの発情に俺が一枚、噛んでいたら何だかビミューだなぁ」 

と思った。 


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