妹が結婚した。
10代の頃は手が付けられないヤンキーで、ヤンキーが過ぎて『番町』になってしまった程の愚か者で、「この様子だと田舎の風習的に『出来ちゃった結婚』となるかねぇ」と当時は思っていたのだが、何故か三十路過ぎまで売れ残り。
まぁ、妹にしろ姉にしろ私にしろ、過激で過剰で滅茶苦茶だった父の影響が強すぎるのが直接の原因なんだが。
父は『父親』としては最低最悪だったが、男性として見れば途方もなく魅力的だった。しかし、フロイト式に言えば父親こそが理想の男性となってしまう。だが、父親は途方もなく無茶苦茶で、出鱈目で、第三者に殺されずに死んだ、と言う事が奇跡だ、と言われてしまう程だったので、そう言う人物は滅多にいない。居たとしてもかかわりたくない。
私は長男だが、子は親を超えたいと思うものだが、親父はさっさと死んで(死ぬ時期まで自分勝手な奴だった)しまったので
『勝ち逃げされた』
と言う感じが未だにする。
とは言え、妹は結婚。相手は×1である。田舎で三十路の独身なんて×1に決まっている。
だが、大事な妹である。妹に電話して夫と話す。黒木家の伝統と家訓と伝えなくてはならない。それが長男の勤めである。この辺が長男の辛いところである。
私「おい!お前の旦那に電話を変われ!」
妹「えー」
私「良いから変われ!」
夫「あ、どうも〜。若田です」
私「兄です」
夫「どうも、どうも」
私「あの、『ムトゥ・踊るマハラジャ』と言うインド映画はご存知ですか?」
夫「いえ、知りません」
私「その映画の中で男女が結婚する際のルールが説かれるんですよ」
夫「はぁ」
私「インドでは『一日9回愛している、と伝え、一日6回キスをして、一日3回SEXしなさい』と。で、黒木家と山本家は実は
『インド式』
で御座いまして、9・6・3は家訓でもあり、伝統なんですね。」
夫「あ、え?はぁ?」
私「人並み以上の事は言いません。只、家柄と言いますか伝統ですので9・6・3は必ず守って頂けますでしょうか?」
夫「いやー、はっはっはは」
私「お互い、三十路過ぎですので365日、毎日、一日3回もSEXするのは大変、辛い事であることは承知の上なのですが『亡き父』の遺言でしたので・・・」
夫「あ、はい」
私「9・6・3で頑張って下さい」
夫「わかりました」
私「何故、黒木家と山本家がインド式なのか私にも判らないのですが、伝統とかはそう言うものですから」
夫「あっはっはっは」
私「父も死ぬ間際に『良いか・・・グッフ!インド式だけは必ず守るんだぞ・・・ゲッホゲッホ!他は何をしても良い。だから『インド式』だけは必ず守るんだぞ・・・パタリ』『とーさーん!』と言う経緯もありますので・・・」
夫「頑張りますw」
私「それさえ守ってくれれば、それだけを守ってくれれば他は何も言いませんから。宜しくお願いします」
夫「よ・・・宜しくお願いします」
この伝統さえなければ姉も嫁に行けるのだが、何しろ『家訓』『伝統』『家柄』な上に亡き父の『遺言』なので守っていただくしかない。
黒木家にしろ山本家にしろ、いつから『インド式』になったのかは判らないのだが(九州とインドは遠い)こう言う伝統やシキタリは意味不明なもんである。インド式なんだから仕方がない
と言う電話の後、30分後に母親から激怒の電話が来た。
「あんた!妹の夫に何を言ってるの!馬鹿じゃないのか!何がインド式じゃボケェ!恥ずかしいとは思わないのか!一族の面汚し!」
と言った内容で25分。
長男は辛い。
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