2016年5月13日金曜日

鴻上尚史に聴いても仕方がない。


【第17話】 鴻上尚史に、再び登場! 「創作がガラッと変わった95年という年」

http://www.moae.jp/comic/mangakarestart/17/1





鴻上尚史に意見を聞いても仕方がない気がする。

95年に観客の意識が変わったワケではないと思う。地下鉄サリン事件以前も不条理な出来事は多数あったワケだし、其れに演劇がリンクしたか?って言えばしてない。

鴻上尚史は時代とリンクしていた、と思っているんだろうか。
鴻上尚史にせよ、野田秀樹にせよ、彼等がリンク出来たのはサブカルチャーと言う巨大資本であって、時代とリンクしたワケではない。

「不条理演劇が95年を境に通じなくなった」

のではなく
「鴻上尚史~劇団第三舞台と言う作風が95年の段階で終わった」

と言うだけである。

だって、歴史を通じてギリシャ悲劇もシェークスピアもチェーホフもベケットもイヨネスコも滅茶苦茶に不条理だし、同時に歴史は演劇よりも不条理に進んでいたワケでさ。

だったら

「キリストが死んでからギリシャ悲劇が通じなくなった」

「第一次世界大戦以降、シェークスピアが通じなくなった」

でも良いわけですよ。



ってか、鴻上尚史と言うか第三舞台全盛期の時代に既にアングラ演劇は通じなくなっていた(らしい)。

野田秀樹曰く、テント芝居や暗黒舞踏を観てもピンと来なくなっていた。だから『劇団夢の遊眠社』になるのだが、野田秀樹の作風は、其れまでのアングラ演劇直系である。
同時に鴻上尚史もテントで演劇をやっていた位だし、鴻上尚史が手本にしたのは、恐らく唐十郎。

ただ、その泥臭さが嫌だった、と言うのが小劇場ブームである。

不条理演劇は鴻上尚史のモノではないし、チェーホフなんて死ぬほどブラックだし、不条理。

で、時代考察が大好きな別役実が95年以前と、以降で作風が変わったか?って言えば全く変わってない。
唐十郎も変わってない(細かい部分での変化はあるが)。


何をヌカしとんねん、って思う。


だが。


鴻上尚史ってのは其れまでの演劇以降を作った部分は大きいんだよな。

「どうすれば演劇で食えるか?」

と言うのを、本質的に考え始めた最初の人なんじゃないか、と思う。

其れまでのアングラ演劇だと座長や劇作家だけが食えて、あとは乞食。
座長や劇作家と言うBOSSがいて、役者と言う下僕がいる、と言うのがアングラ演劇である。

そう言う意味で学生運動と言うか赤軍的なニュアンスがある。

唐組に在籍していた頃に、当時の劇団の主な思案は

「新興宗教と劇団、何の違いがあるんだろう?」

だった。

南河内万歳一座の座長が唐十郎に

「何の違いがあるんですかねぇ」

と尋ねた事があったが唐さんは「いやぁ~」と苦笑いで答えなかった。

新興宗教団体と劇団の違いって、『主な目的を演劇とするか、否か』だけなんだよな。

少なくとも『アングラ演劇』『小劇場』と呼ばれる劇団にとっては其のくらいの違いしか無かった。

教祖が教団の美女を喰うのと同じで、劇団の座長も女優を喰うし。

非常に閉鎖的でトップダウン式。

其れに対してアンチを唱えるって、相当な事なんだけども(新劇にアンチを言ったアングラよりも激しい)。



80年代から90年代中頃までの小劇場ブームは未だ研究しなければならないテーマで、つまりは

『サブカルチャー』

と言うモンが初めて『カネになる』『経済』『資本』になった瞬間だったんだよな。

其れまでにグループ・サウンズとかヒッピーだとか、みゆき族だとか、学生運動だとかあったが、其れが『経済効果』を産んだか?って言う。

もっと言えば『フォーク』『ジャズ』『フリー・ジャズ』『ロック』ですら経済効果は薄かった。
伝説だった『はっぴいえんど』や『村八分』ですら食えなかった(『はっぴいえんど』はスタジオ・バンドの側面が強かったと思う。『村八分』はディスコで演奏)。

初めて食えたのが『キャロル』だった。

キャロルがサブカルチャーとして数億円が動いたか?って言うとビミョーな処。

個人的に日本の『サブカルチャー』『メインストリームではないカルチャー』と言うのは小劇場ブームの頃からだったと思う。


「ワケが判らない事が金になる」

と言うか。もっと言えば

「若い人達が好む、ワケが判らない事が、大人にとっては金になる」

と言うか。

其れが駄目だと言うワケではない。

凶暴で泥臭い団塊世代が終わり、団塊Jrの世代になって、最初の弾数が多いから、人数も多く、戦中派から団塊世代にかけての努力と、光り輝く忍耐により多少の裕福さ。
通信回線の革新(電話ファックス登場と、チケットぴあ、電話レンタル開始)。
コンピュータの一般化。

其れを背景にした小劇場ブームが残した物は数え切れない程の遺産と、負の遺産がある。


鴻上尚史が言うように95年頃から変わったのだと思う。其れは観客が変わったワケではなくて、『小劇場ブームor鴻上尚史』が終わったんだよな。

其れが次に何処に行ったか?って言えばCDバブルがあり、ギャルやファッション、音楽が漸く金になる、と言うか(渋谷系やユーロビート、J-pop)。


『若者文化』


というモノは其れこそ明治時代にも江戸時代にも平安時代にもあったワケだが(平安時代の若者文化の金字塔が『源氏物語』と『蹴鞠』)、其れが巨大資本を纏って・・・ってのは小劇場ブームの頃からだった、と断言しても良いと思う。

歴史的には明治~大正~昭和初期の『モボ・モガ』とかあるんだけども、経済史で言えば小劇場ブームだろうなぁと。

鴻上尚史の芝居が当初は難解だったか?って言えば非常に分かり易い。
夢の遊眠社も分かり易い。

ただ、役者が今のレベルとは違うので可也、荒削りではあるが。

あと、不条理演劇をやっていたが夢の遊眠社も劇団第三舞台も数万人の動員があった。
一回の公演で数千人相手に不条理演劇が通じるわけがない。


ベケットの『ゴドーを待ちながら』の初演で観客動員数が何人だったよ?って言う。ってかベケットを数千人の前で上演された、という話は聞いたことがない。

鴻上尚史の言う95年は『小劇場をルーツとする劇団の規模が大きくなりすぎて、結果的に通じなくなった』と言うか。

岡林信康が規模が大きくなり過ぎて一旦、引退したのを思い出す。


で、此れは小劇場について、とか不条理演劇について、とか「ワケが判らないモノ」について書いているのではなく、音楽について書いているつもりである。


今はAKBを筆頭にアイドルが『サブカルチャー資本』の最前衛かも知れない。

其れと同時にNOISEも大友良英や灰野敬二、非常階段の努力により『サブカルチャー資本』の最前衛ではないかもしれないが、少なくとも

HIP

COOL

と言う事になっている。

だから心配なのは、小劇場ブームが突然、終わったようにNOISEなども突然、終わるんではないか?と思う。

大友良英や灰野敬二、非常階段が後任の為に・・・とは考え難い。
そう言うミュージシャンで後任の育成をしたのは、私が知る限り向井千恵さんだけである。


で、だ。


小劇場ブームの成果は言ってしまえば『夢の遊眠社、第三舞台、東京サンシャインボーイズ、劇団300』の独占だった。

話によると当時、映画だと『安い』。ホテルやリゾートは高すぎる。其処で小劇場と言うのが大体、デートで1万円前後。

そんなニュアンスで皆、観ていた。つまりデートスポットだ。


「ワケが判らないモノ」


を求める人は一定数いると思う。ただ、その一定数が(NOISEに限って言えば)大友良英や灰野敬二、非常階段の御三家だけ。
全体としてボトムアップがあったワケではない。

其れは紹介するメディアにもよるが、やはり『ゲージツ家』というニュアンスなんだよな。

ゲージュツ家=HIPでCOOL

と言うか。

そう言う人のライブで女を口説けるか?って言う。

『あまちゃんバンド』

とかなら行けるかもしれないが。



小劇場はバブル経済も相まって1公演に一千万円と言われていた。

95年に平田オリザがデビューする。

つまり、不条理演劇がハードコア化した、と言う事なワケで。

一千万円に対して150万円と言う制作費と、其れでもギャラを出す、とか『劇団員(座長、制作フタッフも含めて)が演劇で食う』と言うのを初めて実現したワケで。


観客は変わらない。


どうやって、其れを見せるか?と言う処だと思う。
また、人と人が出会う切欠に、と言うか。


鳥の会議#7
~riunione dell'uccello#7~
2016/06/02(THU)
場所:西麻布BULLET`S
開場 19:00/開演 19:30

料金 エントランスフリー(要ワンドリンクオーダー)
http://torinokaigi.web.fc2.com/

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出演
【米本 実】
1969年東京生まれ。
1996年日本大学芸術学部大学院芸術学研究科音楽芸術専攻修士課程修了。
音楽とテクノロジーの関わりをテーマに、自作の電気楽器を用いた電子音楽の作曲、パフォーマンスを行なっている。
2008年オーム社より「楽しい電子楽器 自作のススメ」を出版。
自他ともに認める、東東京が生んだハンダ付けのうまい音楽家。
http://homepage3.nifty.com/yonemino/
【池田 拓実】
コンピュータ音楽家。音楽用または汎用プログラム言語を用いた作品制作とライブ活動。「方法マシン」に参加(04-06年)。第4回AACサウンドパフォーマンス道場優秀賞。「Music as film」他、七里圭監督作品の音楽制作。多井智紀・木下正道と共に「電力音楽演奏会」を不定期に挙行。作曲家としても活動、主な作品はPOING(ノルウェー)、大井浩明、実験音楽とシアターのためのアンサンブル、タンブッコ・パーカッション・アンサンブル(メキシコ)、東京現音計画によって委嘱初演された。近作に弦楽四重奏曲「step into the same river」(2016年3月初演)。7月に女木島にてピアノのための小品、8月に日本エレクトリック大正琴連合(JETA)のための新作をそれぞれ初演予定。現在、Ruby+LilyPondのための作曲支援プログラムLotusRootを開発中。
http://de-dicto.net/wp
http://i9ed.blogspot.jp/
【James Hadfield】
イギリシ出身のライター、素人ミュージシャン。2002年に日本上陸して、2006年から東京に住んでいる。管楽器を中心にして、Jahiliyyah、Human Wife、SHIT!、エッチ焼身、The HNK Experienceなど、様々なバンドに巻き込まれてきた。今回は数年ぶりにソロ演奏として出演する。
【KO.DO.NA】
クラブDJ・即興演奏・現代音楽を経て、劇団唐組に入団。退団後は劇中音楽の作曲や、Improvisation主体のバンドにて活動。
2006年 Musical For Kitchen Records より『小人の化学』をリリース。 2010年 ルクセンブルグの soundzfromnowhere より「riunione dell'uccello」をリリース。 現在は主に、西麻布「BULLET'S」六本木「SuperDeluxe」に出演。 2013年、NY、韓国、デンマークにてツアーを行う。 また、舞台音楽・即興演奏・楽曲演奏と幅広く活動中。2014年、デンマークツアーを行う。
2015年、コペンハーゲンのレーベル『HIPSTER record』より「Riunione Dell’uccello」リリース
また、舞台音楽・即興演奏・楽曲演奏と幅広く活動中。
http://kodona.web.fc2.com/
【DJ Youzy】
北九州生まれの津田沼育ち。悪そうな奴らは全然友達じゃなかった青春時代を過ごす。日本のアングラから、なぜかワールドミュージックを経て、数年前より西アフリカファンクにどっぷりとつかる。
2015年、音楽探訪旅行でマリからナイジェリアまで陸路で行き、マリではSuper Djata Bandのギタリストにアフリカンスタイルのギターを師事。各地でマンディングポップからハイライフ、アフロビートなどのライヴに通い、レコードを探す。
70年代のアフロファンクを中心に、スピリチュアルジャズ、レアグルーヴまでブラックミュージック中心に回します。
totoro.toro.toro、アクセル長尾と焚き火楽団にギターで参加。高円寺なんとかBARの毎月第4土曜日当番。

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