世田谷に住む友人に「近所に面白い喫茶店があるから行こう」と言われたので行ってみた。
友人曰く「森茉莉とか文豪が訪れては執筆していた店」らしい。
思えば唐組の先輩が一時期、バイトしていた喫茶店(今は無いが)も
「三島由紀夫が常連で執筆していた」
と言っていた。私は文豪ではないので分からないのだが、文学者っつーのは喫茶店が好きらしい。
新宿の店もどーでも良い内装の、不味いコーヒーを飲ませる、どーでも良い店だったし。
行くと、確かに趣きがある古めかしい店だった。何と言うか妙なアンティークが多く、
①パイプ煙草
②古いカメラ
③意味不明な古いモノ(農耕具?)
④戦中の新聞
⑤火縄銃
が雑然と並べられていた。しかし『火縄銃』である。店主の趣味なのか?
『火縄銃』をコレクションする、って相当にニッチな気もする。
奥にはジュークボックスと、蓄音機があった。
「10年前は稼動していた」
と言うが店主は80歳である。この年齢にとって「10年前」は可也、アテにならない。
おそらく『30年前』だと思う。美空ひばりのシングル等が入っていた位だし。
そんな店だが、横では
『第二次世界大戦を検証する会』
みたいな連中が老婆二人から『千人針を施された布』『千人針と彼是と書かれたベスト』等を検証しており、老婆が「昔は洋服屋さんでキチっとしていたですよ」と言っている。横耳で聞いていると、どうやら特攻兵士の云々らしい。
『特攻兵』は当時、日本軍では最もCOOLでHIPで『リア充』だったらしい。
何しろ役割が役割なので、『志願兵』しか出来ないし、志願したけども落選したら夜通し泣いていた程で。しかも志願すると『応募枠』を大幅に超える人数が集まって軍が非常に困っていた程なので(考えてみると戦闘機って今も昔も値段は変わらないと思うが一台数十億円なんだよな)。
昔、特攻隊に入る予定だった老人に話を聞いたところ
「仲間は皆、死んだけどもホンッと楽しかった。モテたし、楽しかったしね!もー、グラマン(米軍の戦闘機)が来たりしてね!楽しかったねー!」
らしい。
悲劇かもしれないが、喜劇でもある。
で、そんな戦争体験者と検証する人が彼是とやっている中、店の店主が
「境界かい?」
と聞いてくる。話によると
『境界の彼方』
と言うアニメがあり、それの舞台になったらしくアニヲタが全国どころか、世界から団体で来るんだとか。
昔の喫茶店ってノートが置いてあり、其処に何か書いていたのだが(今で言うツイッター。その日の気分や思いの丈、喫茶店の事等が書いてあった。次に行ってみると、それに対してのレスポンスがあったりしていた)、
『境界の彼方専用来客ノート』
が店にはあり、そのアニヲタがイラストを描いていたり、ヒロインの口癖である
「不愉快です」
とか
「コーヒー、美味しかったです!不愉快じゃないです!」
とか書いてある。佐賀県とか台湾とか韓国からも来るらしい。世田谷の目立たない一角の店が
『聖地』
となっているんだとか。このアニメの舞台になった場所が『邪宗門』と言う喫茶店。
で、この喫茶店のマスターだが『引田テンコウ』の弟子だったらしく昔はマジシャンだったんだとか。
友人と話しながらコーヒーを啜っていると、頼んでもいないのにマジックを見せてくる。
トランプマジックとか、紙切れが千円札になったり、と言うようなモノである。
歳の為か手品のタネが手から見え隠れしてしまうのだが、私はボンヤリした性格だし、基本、アホなので素直に感動・・・ってか、
「アニメに特攻隊に火縄銃に、マジックって・・・どんだけカオスやねん」
と笑いそうになった。ってか、何でこんな所でマジックを見せ付けられなきゃならんのだ。
ただ、コーヒーは美味しかった。また来たいな、と思わせる美味しさではあった。
で、気になるのは、ショボくれた狂ったマジシャンが経営する喫茶店が
『アニメの聖地』
になっている点である。そのアニメとは何なのか?と疑問が沸く。
矢張り見てみるのが良いだろう、と思って駄目もとでYOUTUBEを探したら全話あったので、一晩かけて見てみた。
思えば『妖怪ウォッチ』も見たなぁ。キャラクターのインフレ化が激しくなるのは玩具メーカーとタイアップの悲しさなのだろう。
で、『境界の彼方』。
元々はライトノベル。
「これは良く出来ているなぁ」
と頭が下がる。登場人物は16~18歳。
①ヒロイン:眼鏡っ子、髪はすいてないのでモッサモッサ(髪はピンク色)。貧乳(若干、コンプレックス)、ブログ好きで盆栽好き。妙に貧乏。ピンク色のサイズが大き過ぎるカーディガンを着ている。もちろん、特殊能力。
②ヒーロー役:眼鏡っ子好き。勃起シーンはない性欲無い系(髪は金髪)。饒舌。身長170~180cm。好きな食べ物はオムライス。勿論、特殊能力。
③実はヒロイン役の子は、ヒーロー役の男性を殺す為に派遣された『呪われた血を持つ妖怪殺し』。ところがヒーローに恋をしてしまう。コミュ症っぽいのだが、ヒーロー役や周囲のお陰で段々と人慣れする。で、最後はヒーロー役を殺すのだが、殺さない為に自分を殺す、と言う方法をとる。『命を懸けても守りたい、と言う一心』なのだと言う。
と言う内容だった。大雑把に言えば、そう言う内容である。
内容は『その辺のSF系ライトノベル』である。
正直、ストーリーは陳腐だし、目新しいモノではない。
ただ、ヒロインの設定が「糞田舎の、糞地味な、商業高校を卒業して地方銀行に就職して、職場関係で知り合った人に処女を捧げて、子供を3人くらい産みそうな、丈夫で長持ちな糞地味な子」
と言う徹底した『糞地味な糞面白くない女』と言う設定が面白い。
あとは、アニメ技術の向上と言うか。
80~90年代だと、これに匹敵する画面を作ろうと思ったら『AKIRA』並みの予算が必要だったんだが(数10億円)未だとテレビアニメ。
で、劇場作品になることが前提になっておりラストは有耶無耶で終わらせる。
で、「続きは!」は「劇場へ」となっている。おそらく劇場公開版でラストなんだろう。
「アホ臭!さっさとセックスしねーからだよ!」
「高校生が世界を救う?アホか!高校生男女がやる事はSEX以外ねーだろ!」
「特殊能力があろうが、なかろうが、高校生がやる事はオナニー以外ねーだろ!世界を救う前にオナニーかセックスなんだよ!」
「童貞の男子生徒が考えることは世界を救う事じゃなくてSEXなんだよ!」
「女子高生が惹かれる男子っつーのは特殊能力がある人じゃなくて野球部とかサッカー部とかバスケ部なんだよ!!!特殊能力とか特殊技能は『キモい』で終わりなんだよ!」
と思うのだが違うらしい。
店の店主曰く
「それ(アニメ)で来る子は大抵、コスプレしてくるんだよ」と言う。
店主も元々、マジシャンではあるがアニヲタやコスプレを生きている間に拝めるとは思わなかっただろうなぁ。
で、この店で執筆活動をしていた文豪達は草葉の陰で号泣しているんではないか、と思った。
とは言え、よく出来たアニメである。
とは言え、頭が腐りそうな気がするので今はクラフトワークのライブ版を聴いている。
・・・おい!クラフトワークのライブ音源の方が頭が腐っていると思った奴がいたら、お前の耳に熱して溶かした鉛を入れやる!
0 件のコメント:
コメントを投稿