http://kodona.blogspot.jp/2015/08/blog-post_6.html
テキトーな気分で書いたモノが『BL小説』となるのであれば、果たして「BLとは何か?」と言う疑問に私は立ち向かわなくてはならないだろう。
つまり
「何処から何処までが『BL』なのか?」
と。余談になるが私は唐十郎の元にいた分際で実はサミュエル・ベケットが大好きだった。ってか今でも好きだが。
ベケットの戯曲は意味不明な難解どころを超えて「殆ど無意味」に近い物が多い。多い、と言うか全てである。
●役者が骨壷から顔だけだして3人一緒に延々と話すだけ
●口元だけにライトが照らされて只管、1時間位、意味不明な事を言うだけ
●怒っている人が延々と回りに怒り散らしているだけ
●ホームレスが二人で話しているだけ
●箱が動くだけ
●10人位の役者が一瞬だけ飛び出てきて、後は息遣いだけしか聴こえない
●役者が身体半分、土に埋まった状態で延々と話すだけ
●役者がテープレコーダーに向って話し、其れを再生するだけ
と言う既に『演劇』なのか、どうなのか疑わしいモノが多い。ベケット研究に関しては右に出るものが居ないと思われる別役実(私は殆どミーハー的にファンである。娘の『べつやくれい』も素敵)ですら
「面白い作品ばかりだが上演は難しい。下世話な話になるが、こんな芝居で客から金を取れるとは到底、思えない」
と言っている程である(実際に上演されていない作品も多い)。
私が思うにベケットは偏執狂的に「演劇って何処までが演劇なんだよ?」と言う議題に取り組んでいたんではないか?と思う。其れは
『舞台に何かがある』=『演劇』→なのか?
と言うか。20世紀の演劇はサミュエル・ベケットに始まり、そして20世紀演劇はベケットの物だった、と思う。ベケット的視点からチェーホフ演劇が見直され、そして平田オリザから『チェルフィッチュ』である。
そんなワケで。
昨日、書いた『BL小説』だが私は思うに「若しかしたら『喘ぎ声』さえあれば『BL小説』になるのではないか?」と思った。その『喘ぎ声』の前後の言葉は特に意味は無くて「ん!」とか「っう!」とかさえあれば友人のツイッターの言葉でも宜しいのではないか?と。
と言うワケで実験してみた。前後の言葉は名高きハイジャック事件
『全日空61便ハイジャック事件』
である。キャラクター設定もストーリー設定も出来上がっている。
ストーリー:1999年7月23日午前11時25分、出発してすぐの羽田発新千歳行きの全日空061便ジャンボ機が男にハイジャックされたという連絡が入った。さらに正午過ぎには「長島直之機長(51歳)が刺された」という無線が入る。男は副操縦士に取り押さえられたが、長島機長は死亡。墜落寸前だったが、副操縦士が操縦を代わり、乗客503人は無事だった。
男は江戸川区小岩の無職・西沢裕司(当時28歳)。フライトシミュレーションのゲームをしており、「レインボーブリッジをくぐりたかった」と供述した。
登場人物
長島機長(51歳):全日空061便ジャンボ機機長
西沢裕司(28歳):無職のフライトシュミレーション・マニア
この事件のボイスレコーダーを元に書いてみよう。
-------------------------------------------------------------------
「コックピットから今出るように言ってます。えーと、単独犯のようです。今、コ・バイ(副操縦士)が外に押し出されました」
「・・・いいよ・・・」
「もうすぐ旋廻しますよ」
「・・・んっ!」
「あの、ここ下、見ていただければ、三浦ですね」
「・・・うっ・・・」
「えー、横須賀で、あれが江ノ島。見えますか。右手、あそこに江ノ島が見えますね。」
「・・・あっ、そこは」
「今、回りましたね」
「や!と・・・あっあっ」
「このままにしてますから。大島のほうに向かってますから」
「・・・あ!・・・あう・・・」
「南風20ノットですね。陸上の風は強い風ですよ、はい、難しいですよ。」
「あっ、あー!」
「管制の方が、大島の後どうするかという風に聞いているんですけど、・・・・横田に向かえばいいってこと。」
「・・・んんっ!んー!」
「今度大島から横田に行きたいって言って、横田に行っていいよって言ったら、・・・・その右の上に、ちゃんと横田の・・・、あとどのくらいで横田だって出てくるから。」
「んっ!んっ!んっ!」
「それは、それはわかります。」
「っ!・・・あ・・・」
「だから、このままでもいいと思います。」
「・・・あ!!」
「じゃあ、あの管制の方に、えー横田に行きたいって言いますね。」
「あっ・・・出る・・・っ」
「あとちょっと、これ非常に高度が低くて、ちょっと、もうちょっと上げた方がいいと思うんですよね。」
「あ・・・っ!!そんな、ああ、出る・・・っ!!」
「大島と・・・、こう・・・、まあ雲も出てるし、ねえ、もうう100フィート(約300m)上げましょう」
「ああ・・・ああ・・・ああ・・・早く挿れて・・・」
「それで、じゃあ、横田の方の距離がわかるようにしますからね。」
「・・・挿れてくれ!」
「ちょっと揺れてきたから、高度どうでしょうね」
「そ・・・そこっ!!そこっやっあっやっあーーーー!」
「上げた方が揺れがおさまると思うんですけど、このまんまじゃないとだめですが」
「あっあっ 長島・・・早く、はや・・・く・・・っ・ああ」
「こんなこと聞いて怒んないでね。あのー、どこかで降りますよね。当たり前ですけどね。あ、そのうち指示くれるんでしょうけど、お昼くらいになってくると、どんどんさっきよりも、雲がすごく出てきたでしょう。」
「ヘンになる・・・っ!こ・・・こんなのやだ、ヘンになる、ヘンになっちゃ・・・っ!!」
「うん、昨日も一昨日も、あの東京、ほら、すごく練馬で大雨が降ったでしょう。あれと同じようにあの、これから、あの、もこもこもこもこ白い雲が出てくるから、あのー、今日の予報がそうなんですけど。」
「あっ・・・」
「今こうやって、いいお天気でよく見えるから、3000フィート(約900m)で問題ないんだけれども、これからもっともっと雲が出てくると、ちょっとだんだん飛べなくなってきて、雲に入って来たりすると、他の飛行機と衝突したりする危険が出てくるから、高度かえるとか、あと降りるとか、あの、しないといけないので、それも考えておいて下さい。」
「ん~!ん~!ん~!」
「で、燃料があと2時間、もうないだろうから・・・、もうすでにね、40分、50分も経っているから」
「・・・うそ!早!え?あ・・・」
「あれは江ノ島ですからね、右手に見えるの。」
「っ・・・。ま・・・た・・・いっ・・・くっ・・・・・・!!」
「ここ、外見といてね。見といてねと言うのは、厚木とかあるから。」
「う・・・っそ・・・っ!!どうになかっちゃうよっ!!長島君 死んじゃうっ・・・!」
「他の飛行機もいっぱい飛んでいるから、うん、ちょっと危ないから。」
「や・・・やっ・・・だっ・・・!!」
「あと丹沢の山も、あそこ、見えてきたでしょ」
「恥・・・ぃ・・ずかし・・・いだろ・・・っ・・!!」
「もうちょっと、本当はもう1000フィートくらい高度上げたいんですよね」
「長っ・・・!!やめ・・・もう無理っ・・・!!ねがっ・・・・」
(午前11時55分頃)
長島機長の悲鳴。以後連絡はなし。
------------------------------------------------------------------
どうだろうか?因みに「喘ぎ声」は『よしながふみ』から全文、引用したのだが「っ」「!」と言う文字が矢鱈と多いのが特徴的である。意外と『BL』しているんではないか?と思った。BLしてなくとも『特殊なエロス』はあるのではないか?と。
『よしながふみ』風に松尾芭蕉の俳句を書くと
「ふっ・・・っ古池っ・・・っや!!か!か!蛙・・・!!とっ!・・・・びこっ・・・むーーーーーーー!みっ・・・水っつ・・・・のー!お・・・っ・・・と・・・っ!」
既に俳句にならない。5・7・5の世界にエロスは存在し難いのかもしれない。
では短歌だったらどうだろう。
短歌と言えば寺山修二だ。
「マッ!・・・・チ!擦っる・・・・つかーーーっ・・・の・・・間っ!!の海っ!!に霧っ!!!深しーーーーー! 身捨っ!つっるっ!・・・ほど・・・の祖国はぁっ!ありやーーーー」
既に何の短歌だか判らない。
矢張り対話形式である。対話していなくても良いんだけども、恐らく人間ってのは相手の『喘ぎ声』に矢鱈と反応する生物で、エロスとはそう言うモノなのかもしれない。
安アパートに住んでいる為、時折、近隣のアパートの住民の『睦言』を聞くことがある。大抵は学生さんである。
聞いていると何だか『昔のAV』みたいな声が多い。
「んんーっ!」
とか
「あっ!あっ!あっ!」
とか。
友人は以前、交際していた恋人が「あ」ではなく「お」で喘ぐ女性で、其れが嫌で判れた事がある、と言っていた。
話を聴くと途中までは普通に「んっ!んっ!」とか「あっ!」とかなんだが、興が乗ると
「おーー!!!おおーーー!うおーーー!おーーー!おぉぉぉぉーーー!」
だったそうで。
「醒めるんっすよ。之がまた・・・」
とマクドナルドのコーヒーを啜りながらシミジミと言っていた。
エロスの道は千里の道だ。
『悲しいか?人生は悲しい事ばかりだ』by清水大敬(AV監督)
0 件のコメント:
コメントを投稿