2015年8月6日木曜日

ハイジャック犯はボーイズ・ラブ

前回の日記で『夏目漱石風にBL小説を書く』と言う無意味で無駄な実験を行った結果、プロの小説から「これぞBL小説!」と太鼓判を押され、出版社に勤務していた女性からもメールにて「これぞBL小説!」と太鼓判を押された。

http://kodona.blogspot.jp/2015/08/blog-post_6.html

テキトーな気分で書いたモノが『BL小説』となるのであれば、果たして「BLとは何か?」と言う疑問に私は立ち向かわなくてはならないだろう。
つまり

「何処から何処までが『BL』なのか?」

と。余談になるが私は唐十郎の元にいた分際で実はサミュエル・ベケットが大好きだった。ってか今でも好きだが。

ベケットの戯曲は意味不明な難解どころを超えて「殆ど無意味」に近い物が多い。多い、と言うか全てである。


●役者が骨壷から顔だけだして3人一緒に延々と話すだけ


●口元だけにライトが照らされて只管、1時間位、意味不明な事を言うだけ


●怒っている人が延々と回りに怒り散らしているだけ


●ホームレスが二人で話しているだけ


●箱が動くだけ


●10人位の役者が一瞬だけ飛び出てきて、後は息遣いだけしか聴こえない


●役者が身体半分、土に埋まった状態で延々と話すだけ


●役者がテープレコーダーに向って話し、其れを再生するだけ



と言う既に『演劇』なのか、どうなのか疑わしいモノが多い。ベケット研究に関しては右に出るものが居ないと思われる別役実(私は殆どミーハー的にファンである。娘の『べつやくれい』も素敵)ですら

「面白い作品ばかりだが上演は難しい。下世話な話になるが、こんな芝居で客から金を取れるとは到底、思えない」

と言っている程である(実際に上演されていない作品も多い)。


私が思うにベケットは偏執狂的に「演劇って何処までが演劇なんだよ?」と言う議題に取り組んでいたんではないか?と思う。其れは

『舞台に何かがある』=『演劇』→なのか?

と言うか。20世紀の演劇はサミュエル・ベケットに始まり、そして20世紀演劇はベケットの物だった、と思う。ベケット的視点からチェーホフ演劇が見直され、そして平田オリザから『チェルフィッチュ』である。


そんなワケで。



昨日、書いた『BL小説』だが私は思うに「若しかしたら『喘ぎ声』さえあれば『BL小説』になるのではないか?」と思った。その『喘ぎ声』の前後の言葉は特に意味は無くて「ん!」とか「っう!」とかさえあれば友人のツイッターの言葉でも宜しいのではないか?と。

と言うワケで実験してみた。前後の言葉は名高きハイジャック事件

『全日空61便ハイジャック事件』

である。キャラクター設定もストーリー設定も出来上がっている。



ストーリー:1999年7月23日午前11時25分、出発してすぐの羽田発新千歳行きの全日空061便ジャンボ機が男にハイジャックされたという連絡が入った。さらに正午過ぎには「長島直之機長(51歳)が刺された」という無線が入る。男は副操縦士に取り押さえられたが、長島機長は死亡。墜落寸前だったが、副操縦士が操縦を代わり、乗客503人は無事だった。 
男は江戸川区小岩の無職・西沢裕司(当時28歳)。フライトシミュレーションのゲームをしており、「レインボーブリッジをくぐりたかった」と供述した。 

登場人物

長島機長(51歳):全日空061便ジャンボ機機長 
西沢裕司(28歳):無職のフライトシュミレーション・マニア 


この事件のボイスレコーダーを元に書いてみよう。


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「コックピットから今出るように言ってます。えーと、単独犯のようです。今、コ・バイ(副操縦士)が外に押し出されました」

「・・・いいよ・・・」

「もうすぐ旋廻しますよ」

「・・・んっ!」

「あの、ここ下、見ていただければ、三浦ですね」

「・・・うっ・・・」

「えー、横須賀で、あれが江ノ島。見えますか。右手、あそこに江ノ島が見えますね。」

「・・・あっ、そこは」

「今、回りましたね」

「や!と・・・あっあっ」

「このままにしてますから。大島のほうに向かってますから」

「・・・あ!・・・あう・・・」

「南風20ノットですね。陸上の風は強い風ですよ、はい、難しいですよ。」

「あっ、あー!」

「管制の方が、大島の後どうするかという風に聞いているんですけど、・・・・横田に向かえばいいってこと。」

「・・・んんっ!んー!」

「今度大島から横田に行きたいって言って、横田に行っていいよって言ったら、・・・・その右の上に、ちゃんと横田の・・・、あとどのくらいで横田だって出てくるから。」

「んっ!んっ!んっ!」

「それは、それはわかります。」

「っ!・・・あ・・・」

「だから、このままでもいいと思います。」

「・・・あ!!」

「じゃあ、あの管制の方に、えー横田に行きたいって言いますね。」

「あっ・・・出る・・・っ」

「あとちょっと、これ非常に高度が低くて、ちょっと、もうちょっと上げた方がいいと思うんですよね。」

「あ・・・っ!!そんな、ああ、出る・・・っ!!」

「大島と・・・、こう・・・、まあ雲も出てるし、ねえ、もうう100フィート(約300m)上げましょう」

「ああ・・・ああ・・・ああ・・・早く挿れて・・・」

「それで、じゃあ、横田の方の距離がわかるようにしますからね。」

「・・・挿れてくれ!」

「ちょっと揺れてきたから、高度どうでしょうね」

「そ・・・そこっ!!そこっやっあっやっあーーーー!」

「上げた方が揺れがおさまると思うんですけど、このまんまじゃないとだめですが」

「あっあっ 長島・・・早く、はや・・・く・・・っ・ああ」

「こんなこと聞いて怒んないでね。あのー、どこかで降りますよね。当たり前ですけどね。あ、そのうち指示くれるんでしょうけど、お昼くらいになってくると、どんどんさっきよりも、雲がすごく出てきたでしょう。」

「ヘンになる・・・っ!こ・・・こんなのやだ、ヘンになる、ヘンになっちゃ・・・っ!!」

「うん、昨日も一昨日も、あの東京、ほら、すごく練馬で大雨が降ったでしょう。あれと同じようにあの、これから、あの、もこもこもこもこ白い雲が出てくるから、あのー、今日の予報がそうなんですけど。」

「あっ・・・」

「今こうやって、いいお天気でよく見えるから、3000フィート(約900m)で問題ないんだけれども、これからもっともっと雲が出てくると、ちょっとだんだん飛べなくなってきて、雲に入って来たりすると、他の飛行機と衝突したりする危険が出てくるから、高度かえるとか、あと降りるとか、あの、しないといけないので、それも考えておいて下さい。」

「ん~!ん~!ん~!」

「で、燃料があと2時間、もうないだろうから・・・、もうすでにね、40分、50分も経っているから」

「・・・うそ!早!え?あ・・・」

「あれは江ノ島ですからね、右手に見えるの。」

「っ・・・。ま・・・た・・・いっ・・・くっ・・・・・・!!」

「ここ、外見といてね。見といてねと言うのは、厚木とかあるから。」

「う・・・っそ・・・っ!!どうになかっちゃうよっ!!長島君 死んじゃうっ・・・!」

「他の飛行機もいっぱい飛んでいるから、うん、ちょっと危ないから。」

「や・・・やっ・・・だっ・・・!!」

「あと丹沢の山も、あそこ、見えてきたでしょ」

「恥・・・ぃ・・ずかし・・・いだろ・・・っ・・!!」

「もうちょっと、本当はもう1000フィートくらい高度上げたいんですよね」

「長っ・・・!!やめ・・・もう無理っ・・・!!ねがっ・・・・」


(午前11時55分頃)
長島機長の悲鳴。以後連絡はなし。



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どうだろうか?因みに「喘ぎ声」は『よしながふみ』から全文、引用したのだが「っ」「!」と言う文字が矢鱈と多いのが特徴的である。意外と『BL』しているんではないか?と思った。BLしてなくとも『特殊なエロス』はあるのではないか?と。

『よしながふみ』風に松尾芭蕉の俳句を書くと


「ふっ・・・っ古池っ・・・っや!!か!か!蛙・・・!!とっ!・・・・びこっ・・・むーーーーーーー!みっ・・・水っつ・・・・のー!お・・・っ・・・と・・・っ!」


既に俳句にならない。5・7・5の世界にエロスは存在し難いのかもしれない。

では短歌だったらどうだろう。

短歌と言えば寺山修二だ。


「マッ!・・・・チ!擦っる・・・・つかーーーっ・・・の・・・間っ!!の海っ!!に霧っ!!!深しーーーーー! 身捨っ!つっるっ!・・・ほど・・・の祖国はぁっ!ありやーーーー」


既に何の短歌だか判らない。



矢張り対話形式である。対話していなくても良いんだけども、恐らく人間ってのは相手の『喘ぎ声』に矢鱈と反応する生物で、エロスとはそう言うモノなのかもしれない。


安アパートに住んでいる為、時折、近隣のアパートの住民の『睦言』を聞くことがある。大抵は学生さんである。
聞いていると何だか『昔のAV』みたいな声が多い。

「んんーっ!」

とか

「あっ!あっ!あっ!」

とか。


友人は以前、交際していた恋人が「あ」ではなく「お」で喘ぐ女性で、其れが嫌で判れた事がある、と言っていた。
話を聴くと途中までは普通に「んっ!んっ!」とか「あっ!」とかなんだが、興が乗ると

「おーー!!!おおーーー!うおーーー!おーーー!おぉぉぉぉーーー!」

だったそうで。

「醒めるんっすよ。之がまた・・・」

とマクドナルドのコーヒーを啜りながらシミジミと言っていた。

エロスの道は千里の道だ。

『悲しいか?人生は悲しい事ばかりだ』by清水大敬(AV監督)

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