死んだように眠ったお陰か体調は回復。初日はアルコールでぶっ倒れ、翌日はハーブでぶっ倒れ、当日は北欧らしい寒さ。
そりゃ疲れるよな、と思う。
だが演奏は上手く行ったとは言えヤマハのマウスピースでは若干、難儀したのでホテルから徒歩30分(海外はなんだって遠い)のブラス専門店へ。
本来であれば前日に行く予定だったのだが、その前日に吸ったハーブが効き過ぎて道を間違えていた。
徒歩、1時間かけて行ったのだが到着してみたらトミーのスタジオなのである。
「おかしいなぁ・・・」
と1時間かけて探すが見つからず。自転車の男性に尋ねると
「こんな処にブラス店はありませんねぇ。私がよく利用する店は此処ですよ」
と全く違う事をいう。
「え?よく利用する?貴方もトランペッターなんですか?」
「私はフレンチホルンです」
「凄い!」
「いえいえ・・・」
モノの本によるとデンマーク人男性はシャイで礼儀正しく、腰が低いんだそうで。この男性は、そんな感じだった(身長がデカい事も含めて)。
結局、其の日は諦めたのだが漸く行けた。
しかし、品揃えが悪い。店員が彼是と出してくれるのだが中々、良いものがない。
彼是と悩んで付け焼刃的に
『バック7EW』を購入。
昨日のギャラが吹っ飛んだ。まぁ、今日もギャラは出るだろう、、、と思っていたのだが終わってみるとノーギャラ。とほほ。
で、ライブだがJAZZHOUSEと言うJAZZクラブ。
日本で言えばブルーノート東京みたいな場所。
地下のメインステージでは地元のバンドが死ぬ程、どうでも良いJAZZをやっている。私が客なら怒鳴っているところだが此処は異教の地。
ドラムは単なるメトロノームだし、ピアノはビル•エバンスの1000000000煎じ。最悪なんだけどコペンハーゲンの人たちはクラシックコンサートのように大人しく聞いている。
後半は後で知ったのだが恐らくデンマークの名士的な詩人が朗読でJAZZ Poetry。だが、デンマーク語なので何を言っているのかサッパリ、分からない。
で、私。
私は23時半のMidnight Jazzと言う項目。
判り難いので簡単に説明すると、店はメイン・ステージと、サブ・ステージに別れる。
メイン・ステージは地下にあり、キャパは200~300人位。ドラムセットもある。
サブ・ステージは一階にある。Midnight JAZZと言う項目は恐らく普段は若手とかJAZZ・ボーカルの若手とか、風雲の志抑えがたいフリージャズの若手とかがやるんだろうと思われる。
私は
「NAT JAZZ」
と書かれている。ニーポンから来た変なJAZZじゃないけどMusicianね!と言う感じなんだろうか。
(JAZZHausemの前)
(NATJAZZ:KO.DO.NA)
で、演奏スタート。
Midnight JAZZって事でメインステージの糞JAZZトリオの演奏が終わって一杯やっている紳士淑女の皆様と、ボーイ・ミーツ・ガールがゴチャゴチャといる。紳士淑女の皆様は如何にも「JAZZって素敵ねぇ」と言うかハイソサエティな感じ。
其処へ東洋の島国から来た小人トランペッター。
「今からやる作品はとても小さな音の作品だ。少しの間、静かに。そして耳を象のようにして聴いてくれ。」
と言ってプリペアド・オルゴールからスタート。
オルゴールの曲までは良かったのだが、電気tpの出番になると客がドンドン、帰っていく。
「此れが貴方達が求めている音じゃない事は100も承知だ。だけど、これが俺のスタイルなんだよ・・・・」、、、
と思いながら演奏続行。
途中でMC。
「此処はJAZZクラブだ。此れはJAZZではないかも知れない。だが、JAZZとはなんだ?!JAZZはエクスペリメンタル•ミュージックであり、そして我々の音楽であり、全ての音楽はJAZZだ!これはJAZZだ!」
と叫ぶ。若干、キレ気味。
最後の曲ではボリュームを目一杯まで上げる。爆音である。演奏しながら自分でも
「もう、今日は何のステージなのかわからんな」
と思ったほど。
だって、メインステージではピアノ・トリオなのである。糞上品で、糞みたいにエレガントな。
で、サブ・ステージではノイズなのである。こんな組み合わせ、アリなのか?
最終的に客は半分が進んだ処で半分が帰った。トホホ・・・と思う。
「コペンハーゲンでは厳しいのかねぇ」
とか。
ところが。
終わってから残っていた客から「マジで感動した。あの爆音が余りにも心地良い。鳥の会議でのピアノも天国の音だ。」との事。
「昨日のメイフェんのLIVEに行きたかったんだけど行けなかったから来た」
「昨日のLIVEを見て、また来ちゃったよ」
なんだとか。
ありがたや。
で、質問攻め。
「ケイジ・ハイノは知っているか?」
「インキャパシタンツはどう?」
「あの髪が長くて、サングラスしてノイズの・・・(メルツバウの事だった)」
「ボアダムズは?」
とか聞かれる。あとは「ジョン・ケージは好き?」とか。ってか今時、JAZZをやっている人間でもケージは無視出来ないから質問が変ななんだけども。
話してみると日本や海外のノイズ・ミュージックが好きな子ばかりである。日本もデンマークも同じで、一定数いるらしい。
何となく『非モテ』感がある。こう言うのは洋の東西を問わず、そうなんだろう。
「どうして、こう言う音楽なの?」
「どうして音量が大きいの?
と聞かれる。
英語は苦手だが頑張って答えるしかない。
あ、今、思い出したのだが今年の初めに知人のYと言う女性から(今だから書くが)
「音量を上げる事はイケナイ事だ。共演者への配慮が足りない」
と言われて
「冗談じゃない。ボリューム・スイッチがアンプについているのは何の為ですか?健康の為だとでも言うんですか?俺の音がデカいワケじゃない。共演者の音が小さいだけだ。だったら共演者が音を上げろ!」
「でも、おちょこさんが迷惑がっていた」
「知ったことか!そもそもアンタは見てないじゃないか」
「でも、おちょこさんが言ってた」
「じゃあ、おちょこさんの音が小さいんですよ。俺の音がデカいなんて有り得ないですね。俺の音がデカいと思ったんだったら、その日、おちょこさんが叫べば良かったんですよ。フェーダーを上げるとかね。自分の演奏に必要な音量だから仕方がない」
「でも、おちょこさんが」
とY本さんは延々と言う。そのY本さんはエレキギターを弾いているのだが、音量が云々と言うならばアコースティックギターとかガット・ギターでも弾けば良いのに。
しかし、此処は異国。「音量のフェーダーは健康のために付いているワケではない」と答えるワケには行かない。
何らかの説明が必要だろう。
「大音量や小さな音量、と言う風に区別した事はない。全て必要な音量だ。小さな音も、大きな音も私にとっては同じモノ」
「大音量と言っても、大音量じゃないと表現出来ない事もある。例えば教会の鐘、祈りの声、子供の声、愛を伝える声、どれも大音量だ。聞き手にとっても音を出す側にとっても。魂にコミットするためには大音量である必要があるし、同じ意味で、とても小さな音量も必要だ」
とメチャクチャな英語で伝える。
大体は伝わったらしい。
しかし、ビールが水より安い国で、何故か連日、呑まされている。
終わってから、打ち上げなのかトミーの友人の韓国系のベーシストかギタリストの男性と呑む。
「コペンハーゲンに来るまで、皆、デカいと聴いていたから不安だった。私は身体が小さいから」
「はっはっは。僕もだよ!」
「そう言えば同じだw」
「そう言えば彼女とかいるの?」
「勿論!デンマーク人の彼女がいるよ」
全く東洋の鏡のような男性だった。ってか、普通に良い人。ルックスも体格も良いし。
「日本で演奏した時は不思議な感じだった。此方が必死に盛り上げようと演奏するんだけど、客席は静か。あれ?あれ?って思った」
「日本の人達は演奏中に盛り上がっているんだけど、其れを表現する事はないんだよ。そう言う事を表現する場はリアルタイムではなく『ツイッター』なんだ」
と話すと「確かに分かる気がする」と笑っていた。
しかし、ノーギャラ。
トミーは私がデンマーク人と同じ金額を所有している、と思っている節がある。LIVEは23時からだったからトミーが街案内をしてくれるのだが、Effector専門店とか面白いし、北欧デザインのEffectorは確かに欲しくなる程、素敵。インディーズ系の音源を扱う店などもある。ガジェット的楽器を売っている店とか。
金がないから買えないっつー。
コカコーラが300円。
コンタクトレンズの洗浄液が4000円。
シャンプーが1790円。
ママチャリが4万円(中古)。
型落ちのマッキントッシュが5万円。
ビールが100~150円(何故かビールだけは激安)。
地下鉄で一駅で500円。
ビールを除けば全てが高額である。
そう言えば余談だがホテルの朝食は不味かった・・・と言うかデンマーク料理は日本人にすれば大抵、不味い。
で、JAZZHAUSEでの控室はスタッフルームの横だった。
横でスタッフがPCを弄りながら賄いを食べているんだが、其れが
『生の人参』
だったりする。皮すら剥いてない。「皮くらい剥けよ!」とビックリした。他の人は滅茶苦茶に適当に作ったと思われるパスタを食べている。何というかパスタに色々なモノを混ぜました、と言う感じ。
『ねこまんま』
みたいだった。
だが、私は連日、フランクフルト・ホットドッグを食べている。理由は「経済的理由」なんだが。
しかし、やっぱり人参の皮は向くべきだと思う。
さて、次回はラストのアジアハウス。
上手く行くと良いのだけども。
2 件のコメント:
とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
有難うございます。
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