2016年3月13日日曜日

アナログ盤

アナログ盤の流行を素直に喜べないエレクトロニック・ミュージック界隈

http://jp.vice.com/lifestyle/why-the-so-called-vinyl-boom-may-be-bad-news-for-electronic-music



レコードが流行っている→だからレコードで作品をリリースする・・・と言うのが、どうも解せない。
物体としてのレコードは、とても素敵だ。レコードじゃないと聴きたくない盤もある(70年代のロックやクラシック、モダン・ジャズ)。
しかし、レコードが流行っているんだろうか?と言う気がする。

『流通させる』
『聴いて貰う』

と言う事に関して、レコードはマニアックな物体で、それは同時にCOOLと言うかHIPな物体であり、iponeやアップル商品と対して変わらない気がする。
私が高校生~学生の頃に『渋谷系』と言う音楽が大流行し、『再評価』とかで大昔の盤がLPで再発されたり、どうでも良い盤に凄まじい値段がついたりしていた(ザ・ダイナマイツの『トンネル天国』のオリジナルEPは最高50万円の値がついた)。

で、私もLPや12inを大量に買っていたのだけども、当時、
『レコードを買う』
と言う行為がHIPだったし、レコードの袋を持ち歩いているのがCOOLだった。

そう言う時代だった。
同じ盤がCDでリリースされていたとしても、である。
高校生の頃にパイオニアからCDJの最初のモデルが登場したから、クラブの現場としてはCDでも良かったはずなのだが、店にCDJがなかったりしていたが、其れはあくまでも『DJ』と言う人種の話しであり、フロアで踊っている側としては余り意味が無い事でもあったが(ただ、初代CDJは使い勝手が悪かった)。



レコードは流行っているんだろうか。
と言うか、レコードでリリースすれば何となくOKなんだろうか。
どうも、モヤモヤする。


身も蓋も無い事を言えば『音楽』と言うのは芸術の歴史上、初めて『データ化』に成功したメディアである。
絵画ってのもあるが複製技術が20世紀に入るまで駄目だったワケだから。


口伝え

楽譜

オルゴール

エジソン型蓄音機

円形型蓄音機(今のレコードの原型だ)

LP

ワイヤーテープ

磁気テープ

磁気メディア

MD、DAT、CD、

MP3

ゴチャゴチャ


趣味でSP盤を集めていたのだが、SPはSPの魅力と言うか、SP盤って非常に聴く側への負担が大きいメディアである。ゼンマイを回して、針を交換し、両面合わせて1枚最大10分。
針は一枚ごとに変えなければならないので1枚10円と言う計算になる(100本入りが1000円)。
しかも盤はガンガン、劣化するし。
しかし、SP盤でストラヴィンスキーの『火の鳥』を聴いても、CDでもLPでも別に良いんだよね、って言うか。
アンティーク趣味、と言う自分がいる。音質が良いワケではない。構造上、SP盤の音はハイファイではない。



LPからCDに変わって、何が変わったか?って言えば、もー、そりゃ何もかも変わったと思う。

私はLP時代のインディーズ事情を知らないが、恐らくLP時代にインディーズで作品をリリースする、って経済的に相当な負担だったんじゃないか?と思う。

中古屋に行くと、恐らく一枚で終わってしまったであろう聞いたこともないレーベルの、オムニバス盤に遭遇することがある。
10inなのに中身はハードコアやグラインドコア、ウクレレ片手の女の子からインダストリアル、普通にフォーク、とか。

「このレーベルは、何がやりたかったんだ?」

と思ったり。

音も酷い・・・と言うかスタジオやマスタリングに時間を掛けられなかったからだと思うけども、今の基準で考えると酷い音質が多かった。


「レコード、マンセー!」
と言う声と言うか記事はよく見かけるのだが、それってホントかよ?って言う気がする。
売る側は・・・と言うかある程度の流通網を持ち、ある程度のお金と人徳がある人ならば良いのかもしれない。


NYでエド・アスキューと対バンだった際に、エド・アスキューが余りにも素敵で音源を買おうと思った。
「私は貴方を初めて聴いた。だから、沢山のCDから一枚を選ぶことが出来ない。貴方のオススメを教えてくれ」
と言ったら「・・・じゃ、これ」と言う感じでLPを渡された。
内容は凄いんだけども、日本に持って帰るのに面倒な盤を・・・!と思った。
本人としてはLPの在庫が余っているし、持って帰るのが面倒だからLPを薦めただけなんだけどもさ。


テクノロジーの良さって、一昔前ならば100万円だったものが数万円だったり、無料担ったりすることであり、其れは世界レベルで大きな事だと思う。
シリアで空爆に悩まされるラッパーでもDAWを使えばトラックは作れるし、其れをネットを通じて聴いてもらうことが出来る。
CDを作るコストは下がる。
だが、スタジオやエンジニアの給与は下がる。
然しながら、『音楽』『音源』と言うモノが一部の特権的ミュージシャンのモノではなく、開かれた存在になる・・・・と言うか。
其れは俺は良い事だと思うんだよな。



今年の目標も「自身の音源をリリースする」なのだが、一応、ituneではリリースしているのだが、矢張り音源と言うか物体を作らなくてはな、と思う。
で、そんな私にアナログ盤でリリースと言うのは相当に負担が大きい。
ぶっちゃけ、一枚出したら郷里に帰って実家の家業を継ぐしかねぇ!って位に。
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と言うか、LP一枚出して、金欠になって其れが原因で解散したバンドが90年代までゴロゴロいたワケだし。
「レコードの売上が伸びている!」
と言う言葉を読む、聞くたびに、何かにノセられている、と言う気がしてならない。
自分が知らない、何処かの誰かが、そう言う風潮を作ろうとしている、と言うか。
実際にNYとCPHにはCD屋はなく、ヴァイナル盤かテープしか売っていなかったが、DJはデジタルでやっている。
自分の知らない所で「音楽のモードはコレだ!」とされていて、その根拠や言っている人の姿が見えないのが不気味な気がする。

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