2012年10月7日日曜日

土佐日誌六


昨日、愛媛県出身者と話していたのだが

「俺も四国だけども高知県はヤバイ!徳島と愛媛は関西文化って言うか近いからさ。そう言うのを受けてんだけど高知県だけは違うよね。大体、何を話しているのかサッパリ判らないんだもの!」

「あ~。確かに。方言・・・って言うのかな。あれは」

「多分、独立した言語だと思う」

「なのかなぁ」

「前に工場で働いていたときに高知県の奴が来たのね。で、そいつが言う事が全然、判らないわけ!方言って言うか独特な言語で!あれはビビった」


そう言えば高知県長岡郡大豊町へ行って朝、ベランダで朝食を食べていたら畑仕事と言うか近所の人が畑の整備をしていた。『近所』と言っても家まで1km位あるんだけど。
で、家主が

「あ!Tさーん!Tさーん!」

と怒鳴りあげる。以前は『菖蒲の花のような女性』と言われた彼女だが、今では45歳で立派な『高知県の人』って事で『菖蒲の花』のようにボソボソと話すのではなく、常に都内では『怒鳴っている』と言うか、声がデカイ。

「Tさーん!彼!東京から来てくれた友人なんですよ!」

「$!☆п㊦Ь」

「彼、現代音楽をやっているんですー!」

「ж㊥н㌍ヾТ☤」

「宜しくお願いします~!」

「ΜΛ☆Эмⅶй㍑㌣_Щ」

「あ~、そうなんですか」

「й☤☸☤◎ヾ■βα=&%%$$」

「宜しくお願いします~!」


Tさんが何を言っているのかサッパリ判らない。いや、本当に判らないのである。なんと言うかテンポの遅いタガログ語に聞こえる。

「あの、Tさんは何を言っていたんですか?」

「畑仕事で五月蝿くしてゴメンって」

「何を言っているのかサッパリ判らなくてビックリしました・・・」

「まぁ、そんなもんだよ!」


しかし猫達には私の言葉は通じているらしい。飼主が都内出身者って事もあり猫との散歩が済むと猫一匹一匹に

「はーい。ちゃんと帰ってくる猫が良い猫ですよ~」

と話し掛けている為かもしれない。もしも彼女が「完全に高知弁をスラングすら使う」だったら

「!"#$%&'()=~|{*}_~`+=P+L-09876<>L+*`O=P))'((&$%&$'」

と言う言語しか猫は聞いたことがないわけで

「君がブルー君ね。素的なお顔で」

と言っても猫としては

「こいつ、何を言っているんだ?」

と無視された可能性もある。猫は賢いので彼是と話す必要はなく猫の「にゃ」と言う声の意味は一つだけしかないらしく

「ここに居るよ」

「私です」

だけなんだとか。しかし、冷静に考えると

「やっぱさ、之までの西洋音楽ってのはトップダウン式と言うか指揮者が絶対権力者であり演奏者はその下僕と言う構図があるわけですよね。其れに対して現代音楽としてはNONを突きつけたワケだけども、そうした事により、そのNONを突きつけた現代音楽家こそが権力者となってしまう、って言うパラドックスがあるわけでさ」

とかウダウダと言わずに社会を構成する事が出来るっつーのは中々、高度なのではないか?と思う。


しかし、高知弁・・・と言うか『高知語』。あとで聞いたらもっと凄いらしい。

「高知弁にはさ、普通の日本語にはない『自己完了形』があるんだよ」

「例えば?」

「『今、仕事を終えた処だ』とか」

「英語だとありそうですけど日本語だと『終わりました』って言う伝達でしかないですもんね」

「其れが高知弁にはあるんだよ」

「高知弁で言うと何になるんですか?」

「しごっ、しゆー」

「え?」

「しごっ、しゆー」

「其れは何語ですか?タガログ語ですか?」

「高知弁だよ!」


そう言えば家主は近所(歩いて往復1時間)のコンビニで一時期、バイトをしていた。

「其れで、その方言に慣れるのが一番、辛かったね!」

「ATMをさしながら実はお菓子コーナーについて語っている、とかありそうですもんね。筒井康隆みたいに」

「いや、其れが冗談じゃなくて本当にそう言う事があるだよ!それだから困ったんだよ!」

「・・・え?」

「だから銀行ATMを指しながら何か言ってるなぁ~と思ったらお菓子のグミについて説明していた、とかさぁ。本当なんだから!」

「・・・」



夜に猫の散歩をさせていると山岡石材の令嬢が通りがかった。令嬢だが74歳の年寄り。しかし令嬢なので近隣の男性達の憧れ、と言うか『高嶺の花』らしい。

「☸㌣ЩЭ㌍㊦゛Κ◇」

「あ、どうも~」

「!"#$%&'()=~=)('&%$」

「あ、そーなんですか!」

「|{}_?*‘~|~=(」


もう、何を言っているのかサッパリ判らない。だが、令嬢。私に話すときは何処で覚えたか標準語で

「ここの若者達を育てて下さい!お願いしますね!」

と6回位言っていた。遊びに来た、って言っているのに永住しに来た、と思い込んでいる。

「あ、はぁ・・・」

と言う。

「あれは何て言っていたんですか?」

「回覧板を早く廻せ、って」

「全く判らん・・・」


唯一、判ったのは家主女性を口説きに来たNHKの集金人だけで天理教信者なので奈良県の天理教の高校~大学に行っていた為、何とか標準語が話せる。

だが、家主を口説こうと思って尋ねて見たら私がいたので激憤しながら帰ったが。



私の愛すべき兄弟と姉妹。
(寝るときは6匹一緒がルールらしい。幸せな顔)

(食事中)

(昼寝)

(私が寝るはずの布団の上にて)

(寡黙なディグ)

(寝顔は幸せなバード)

(幸せなバード)

(猫団子)

(猫団子)

(猫団子)

(眠たいディグ)

(猫は箱が好き)


(6匹のボス猫:ブルー)




実は内心、高知県長岡郡大豊町に移住を考えた。余りにも素敵過ぎる町だし、幾ら言語で書いても書ききれない魅力があり過ぎる。あれほど美しくて素晴らしい町があるだろうか。

一昔前は『沖縄』ってのがあったが結局は観光地だし。

兎に角、言語化出来ない素晴らしさがある。食べ物は美味しいし、空は美しい。音も綺麗だし、猫兄弟も良い子ばかり。


帰る前日に家主とマーチン、ブルー(猫)と夜の散歩をする。山岳地帯なので空が晴れる事は殆どなかったのだが、その日だけは晴れていた。彼是と話しながら空を見上げると星空だった。

「星って・・・こんなに沢山あったんだ・・・」

と思った。プラネタリウムでも見た事がない程の星空。あまりに凄くて足が震えた(実話)。

「これが・・・ピタゴラスが見た夜空か・・・」

と思った・・・って言うか言葉が頭から吹っ飛んだ。


帰りは高知龍馬空港にて。家主がリポビダンDを一気飲みしながら高速道路を凄いスピードでぶっ飛ばす。

「あの、Aさん。今、僕の心境を伝えても良いですか?」

「え?何?」

「ここで事故ったりしたら即死ですよね。・・・こんな処で死にたくないなぁ・・・」

「あーっはっはっは!大丈夫!大丈夫!リポD飲んだから!」


命の危険性をヒシヒシと感じる事、1時間。漸く高知龍馬空港。


話は変わるが先日の愛媛出身者に

「いや、だってさ。愛媛とか徳島県は関西文化が来るわけじゃん。だけど高知県に来る情報って『お遍路さん』しかいないんだよ」

「いや、それは嘘だろー」

「ホンとだって!俺が宿泊した友人宅にも『お遍路さん用の部屋』ってのがあったんだから!」

「マジで?」

「で、そのお遍路さんが本土の事を彼是と話して・・・多少、誇張したりしてさ。で、高知県民は彼是と考えて『碁石茶』とか作っちゃうワケよ。『ハチキン寿司』とか」

「何、それ?」

「えーっと、碁石茶はねぇ。お茶の葉を蒸して、浸けたモノ。味は不味いってか酸っぱいのね。乳酸菌たっぷりで。」

「それは『お茶』なの?」

「大名とかは飲んでたらしいよ。だって『お茶』がないんだから『お茶ってこう言う感じ?』って想像で作るしかないからさ。あとハチキン寿司は山岳地帯で魚が取れないから『こんにゃく』を稲荷の『油揚げ』代わりに使ったモノで『こんにゃく寿司』って言うか」

「それは美味いの?」

「不味かったねえ・・・」

「でも、お遍路さんが全ての情報源ってのは、そりゃ嘘でしょ!」

「ホンとだって!だって高知龍馬空港だけだぞ!『お遍路さん用の部屋』とか『お遍路さん御持て成しコーナー』があるのは!」

「え?マジで?」

「其処で俺は何故かお遍路さんの格好させられて写真撮られたんだから」

「見てえー!」

と言うのでUP。


(お遍路さんKO.DO.NA)


家主がこの写真を撮影する際に説明してくれる。

「この麦藁帽子がさぁ~、よく出来てんだよ!頭が蒸れなくてねぇー」

幸いお遍路さんには会わなかったが家主のMIXIを見ると先日、『生お遍路さん』に遭遇したらしい。UMA並に「ホンとにいるのか?」と思われる『お遍路さん』だが高知県では『お遍路さん』とは呼ばない。高知弁では『お遍路さん』は


『フェイスブック』

または

『ニュー速』


と呼ばれている。本土の貴重な情報を伝えてくれる貴重な情報源。だからお遍路さんが居ても高知県民は

「あ!フェイスブックさんがいる!」

「まぁまぁ、ニュー速さんも長旅、ご苦労様でした」

となるわけである。因みに本家『ツイッター』『ニュー速』が登場する遥か昔の江戸時代から、そう呼ばれていたらしい。




時間があったのでお遍路さん写真を撮ったり、喫茶店で一服し、飛行機へ。Aさんと涙ながらに別れる。
猫達も私が帰る事は知っていたみたいで、何処となく余所ヨソしいのである。で、玄関に全員で見送ってくれた。


飛行機が離陸して

「第二の故郷と、新しい兄弟が出来ちゃったな」

と思った。ってか私の故郷は北九州市だが放射能で汚染されたし、あの際の行政の動きを見て「故郷はなくなったな」と思ったから『第一の故郷』でもいいんだけども。


飛行機が離陸する前に滑走路へ。とてもドキドキする。不安感というか。


「戦場へ出兵する兵士みたいな気分だ」


と思った。ANAのジャンボ機が『B-29』にしか思えない。何で帰るか?って言えば音楽をやる為で、音楽は戦場だと思う。
少なくとも私は上京して『戦場』と思って色々とやってきたつもりである。


戦場に疲れたのかな・・・と思った。


高知県長岡郡に住むってのは悪くないよな、って思う。数年前に日本各地で『ロック・フェス』が盛んに開催されたが、一応、ロックとかやっている子もいるらしい。



だが、第一回で終ってしまったみたいで、その後はないらしい。で、Youtubeの文章を読むと

「2008年5月4日、高知県大豊町ゆとりすとパークで開催されるライブイベント「キイロノセカイ」inトヨロックフェスティバル のプロモーションビデオ。
fttp://www.kiironosekai.com」

とある。URLをクリックすると出会いサイトと言うかAVの宣伝ページに飛ぶ。トホホ・・・である。


とは言え、そう言う場所でやるのも悪くはないのかもな、と思ったが今日、思ったのは

『河合タクジ』

と言うピアニスト。原発事故で怖くなって福岡の糸島と言う辺境に逃げた。時折、車を飛ばして名島の方でライブ活動を行っている。

「農業をやっている」

と言うが『趣味の菜園』レベル。まぁ、ヒモなんだろうけど。


で、彼が何故か地元のTVで紹介された。其れを見て何だか複雑な気がした。河合タクジ氏のライブは見た事がある。真剣を子供が振り回しているような無邪気な凶暴さがあった。

だが、福岡に移住した氏の演奏からは決定的に、その鋭さがなくなっている気がした。

あれは私には少しショッキングな映像だった。TVだったからかもしれないけども。だけども、それでもやってしまうのが河合タクジであることも知っているから、あのションボリな演奏が今の河合タクジなんだろう。


「まだ帰れないよね」

と思った。

でも、帰る場所が出来た、って気がする。実家は『帰る場所』では明らかに違うし。



其れでは皆様。

皆様に耳と目と鼻と口で、高知県長岡郡大豊町の夜のような時間を体験して頂きたく思います。




riunione dell'uccello 
西麻布スーパーデラックス 
2012/10/25(thu) 
open/19:00
start/19:30
charge:free 

出演 
KO.DO.NA 
http://kodona.web.fc2.com/

Sisters of Avalanche 

Cal lyall 
http://www.subvalent.com/cal-lyall/

βCDJ:変なドレス
http://sound.jp/hennadress/

VJ:RGB

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