そんな私の夕食は牡蠣とほうれん草。
毎年、中学生の時のバレンタインを思い出す。
中学1年製の時。
仲が良い女子が居た。
九州の学校なので荒れた処があったが、私は余り気にならず。
で、その女子はルックスは悪かったが良い話し相手で、私の話を何時も笑いながら聴いてくれていた。
で、私も彼女を楽しませるために必死で喋っていた気がする。
で、まだ12歳か13歳。
そんな折。
バレンタインと言うものが来た。毎年、親や姉妹に貰うモノだったが当日は何故か父と私だけだった。
其処へ、その女子が来た。
ベルがなって父親が出たら、同級生なので
「か・・・カズタカ!女の子が来とるぞ!」
と父親も驚いている。
確か田北と言う名前だった(はず)。
その子が友人を連れて、私にチョコレートを渡してきた。ラッピングもされている。
「はい!」
って感じでぶっきらぼうに渡してきた。何故か、その子は何時もの田北と違う。気押される感じと言うか。
いつも笑っている田北と違う。
意味がわからず
「これ・・・義理チョコだよね・・・?」
と聴いたら、田北が物凄い目つきで
「違うよ!あんたの事、好きよ!」
と怒鳴られた。
思えば、その数週間前に机にラブレターが入っていた事があった。
『好きな人はいますか?』
『どんな女性が好きですか?』
とか、そう言う質問形式で、誰から届いたのか分からないし、どうすれば良いのか分からなかったので担任の教師に
「こんなのが届いたんですけど、どうすれば良いんでしょう」
と渡したら、
「・・・まぁ、あれだ。そういう事もあるから」
と何故か没収された。
で、教室に戻ったら田北と、田北の友人が
「ねぇ、ねぇ、手紙が入っとったんやろ?どーしたん?」
と嬉しそうに言う。
「分からん・・・。やけ、先生に渡した」
と言ったら
「・・・っふ。あんたって馬鹿ね」
と言われた。
その時の表情は私と同世代とは思えなほど大人っぽかった。
少し驚いた。
チョコレートを渡されて
「違うよ!あんたの事、好きよ!」
と怒鳴られて、愕然とした。で、口から出た言葉は
「うるさい、馬鹿!」
だった。
まだ、13歳なのである。女系家族育ちなのである。
だから、と言うワケじゃないんだろうけども自分が『異性の対象』となっていた事に驚いたし、驚愕したし、怖かったし、違和感だった。
田北と言う同級生の女子の事を異性として見ていなかったか?って言えば、彼女を笑わせるために、楽しませるために、思えば田北とばかり話していたから、何処か心はあったのかも知れないけども、自分では分からなかった。
もう少し年齢を重ねていれば違ったのかも知れないが、自分が『男性』である、少なくとも周囲からは『男性』として見られている事に強烈な違和感と、恐怖感があった。
そのチョコレートは貰ったは良いが、どうすれば良いのか分からなくて、食べる事も出来ないし、捨てるワケにも行かないし・・・と思い、家にあった『壺』の中に居れておいた。
翌日、学校に行ったら田北が
「あんた、あのチョコ、食べた?」
と聴く。もう、恥ずかしくて恥ずかしくて、
「捨てた」
と言ったら
「なーん!(何故だ!)800円もしたのに!」
と怒鳴られた。
その日から田北と話すことはなくなった。
それから3日後。
リビングで姉と母が、私が貰ったチョコをボリボリと食べている。
「あ!俺が貰った・・・」
「なんね?これ、あんたのね?変な処にあるけん、食べてしもうたわ。これ、美味しいわぁー」
と母と姉に食べられた。
田北とは、その後、班が変わったし、クラス替えもあって話すことは皆無になった。
今はどーしてんのかねぇと思うが。
嗚呼、誰が故郷を想わざる。
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