2018年12月30日日曜日

Christmas of Chico Hamilton

クリスマスは職場は忙しかった。
ただ、「クリスマスのプレゼントに中古PC!」と言うワケではなく、たんに「年末だから」と言う理由っぽい。
私も長年、使い続けてきたゲートウェイの元々、windowsXPが入っていたメモリ1GBのPCにリナックスを積んでいた奴からメモリ4GBのPCに変えたし(店長に無理を言って数千円で買った)。


そんな折。


忙しい仕事が一段落つきそうな状態になった頃に一人の老人が来た。
「動画サイトを見ると妙なポップアップが出て困る。直し方が分からない」
と言う。
要するにコンピュータ・ウィルスに感染している、と言う事である。話は簡単でウィルス・セキリティ・ソフトをインストールすれば良いだけの話である。
だが、「分からない」と言うので
「じゃあ、暇だったら持ってきてくださいよ。見るだけなら、見ますし。
まぁ、時間があればですが」
と言ったら4時間後に持ってきた。


爺さんは昭和16年に産まれた。だが、産まれた場所は当時の中国(と言うか当時は日本の県とか市である)。
産まれて直ぐに大陸から命からがら逃げてきたらしい。
それで商社に入り、流石に私でも見たことがない
『紙パンチ式コンピュータ』
で色々とやっていたんだとか。
磁気メディアのコンピュータは見たことはあるが『紙パンチメディア』は見たことがない。
ってか、当時のコンピュータなんて『計算機』であってワードやエクセルだとか通信なんて皆無である。





「凄いですね・・・」
「でも、当時に比べたら今のパソコンは凄いね!。私にはサッパリ分からない」
「いや、紙パンチのコンピュータの方が遥かに難しいでしょ!」
と言いながら、爺さんのPCを拝見。


爺さん曰く「動画sサイトを見るとポップアップが出る」と言う。
YOUTUBEでは可能性が低いのだが
「まぁ・・・男性向けの・・・」
と言うのでエロ動画。
娘に「俺のパソコン、ちょっとオカシイんだよ」と言った処、娘さんは感が良いのか「お父さんみたいな人の為にパソコンがあるわけではない!」と激怒されたらしい。
だが、世の中・・・と言うか日本でPC(スマホも含む)が普及した理由は3つだけだ。
①エロ動画やエロ画像
②グロ画像やグロ動画
③MIXIに始まるSNS
である。男性ならば200000%の確率で、上記の2つはやっている。
SNSも駆使すればSEXも可能だ。


「いやいや、何を言っているんですか。ネットなんざぁ、そのためにあるんですよ。それに男性ならば必ず見るサイトですから」

と言ってPCの中身を拝見すると、どうもブログをやっているらしく、
『私にとってのJAZZ』
と言った草案があった。

「JAZZですか」
「まぁ、好きでねぇ」
「私も好きです。パーカーとか」

と言うと、バップやハード・バップは好きじゃないらしく、スィング・ジャズだけらしい。



パソコンで「エロ動画を見るとポップアップが出る」と言う事なので、まずはエロ動画サイトに行く。
爺さんが、どのサイトを見ているのか分からないので『入門編』として有名な『Xvideos』に行く。
幸い、客がいないので良かったのだが、流石に職務上、コンポライアンスがあるのか皆無なのか分からない職場だが、ノートPCのディスプレイを思いっきり傾けて



 /

―――


こんな感じでXvideosを見ると、確かにポップアップが出る。

しかし、職場で老人と私でエロ動画を見る、と言うシュールさ、それと

『今日はクリスマス』

と言う凄まじい状況は泣けるを超えて、私が面白くなってしまった。

で、本気で対応・・・やっては駄目なんだが・・・やってしまった。

まずは通常のセキリティ・ソフトでは駄目なので特殊な奴をダウンロードしてインストール。
それで駆除。

あとは、セキリティ・ソフトを2000円で買ってもらいインストール。

最後は、また二人でエロ動画を見てポップアップが出ないことを確認して終了。



『クリスマスにエロ動画を老人と一緒に鑑賞』



と言うのは凄い気がする。

「最近のは凄いよねぇ〜!」
「ねぇ。昔は苦労してレンタルしたもんですが」
「やはり、見ちゃうんだよね」
「そりゃ、男性なら当然ですよ。そのためにパソコンはあるんですから」

と白人女性のSEXを見ながら談話。


その後、JAZZの話になる。
スウィング・ジャズが好きらしく「ベニー・グッドマンは好きだった」と言う。
私もJAZZを最初に聴いたのは父親が持っていたカセットテープでの『ベニー・グッドマン』
だったし、ビックバンドのジャズは今、聴いても新鮮である。
一番、最高なのは戦中の『Vディスク』とかディーク・エリントン、カウント・ベイシーだが、それでもベニー・グッドマンは最高だ。
すると
「チコ・ハミルトン」「アーティー・ショウ」と私も知らないミュージシャンを言う。
「知らないですね」
と言いながら爺さんのPCでYOUTUBEで聴いてみると結構、良い。
「カッコイイですね!」
と言ったら
「あんたは明日、出勤してる?」
と言う。
「明後日なら出勤ですが」
と言うとLPを貰ってくれ、と言う。
業務上のコンポライアンス的にOKなのかNGなのか分からないが、小一時間に渡る爺さんとの会話で、なんとなく仲良くなった気がするのでOKした。
 

翌々日。

実際に爺さんが来てLPを4枚、持ってきた。
爺さんの父親がJAZZが大好きだったらしく、子供の頃に父親に言われてLPを買っていたらしい。

父親の影響で本人もJAZZが好き・・・と言うモノなんだとか。

だが、爺さんの年齢と話を聞くと、当時のLPって今の金額に換算すると3〜4万円、または其れ以上の金額である。

戦前にベートーヴェンの組曲をSPで買ったらボーナスが消えたらしいので、今の金額で換算すると30〜40万円。

因みに戦前を代表するレコード・コレクターは『宮沢健二』である。
冨田勲が初めて買ったLPはストラヴィンスキーの『春の祭典』だったのだが、高額で親戚に金を借りて買ったらしいので10万円くらいか。
だから『名曲喫茶』『ジャズ喫茶』と言う特殊な喫茶店があったのだが(ロック喫茶もあったらしい)。
音楽メディアは現状、値下がり続けている。


とは言え爺さんの思い出の品々である。50年代とは言え、演奏者はロイ・エルドリッジ、ハリー・ジェイムスにビリー・ホリデイと蒼々たる面子であり、手元に置いておいて損はしないモノばかりである。
其れに50年代のビック・バンド・ジャズは『ジャズ』が、まだ『プロトタイプ・ブラック・ミュージック』と言うか、サウンドとして面白いモノである(ジャズが「ジャズでーす」となったのはバップからだったと思う。と言うかジャズはバップである、と断言しても良い)。



「貴方が私に親切にしてくれたお礼としてね・・・。あと、こう言う盤を若い人に託したいんですよ。
これは・・・私の『終活』なんですよ」
と言う。
おいおい、重たいモノを持ってくるな、と思ったが、受け取った。

しかし、「人生の最後のための活動」と言いながらもエロ動画をチェックする精力があるなら、大丈夫じゃないっすか?と思った。





因みに、帰宅して聴いてみるが、あまり好みの音ではない。元データがSPだから音質はペラペラだし(蓄音機で聴ければ最高なんだがLPだ)、何より私が風邪を引いてしまったので聞けず。
次の元号の際に聞きますかねぇ。

0 件のコメント: