2018年9月8日土曜日

男は星座/梶原一騎2

前回、梶原一騎について書いたが矢張り、此処は梶原一騎ワールドの最高峰である 

『空手地獄編:牙』 

を取り上げない事には収集が付かない。 



梶原一騎と言えば『あしたのジョー』『タイガーマスク』が代表作だが、自身の性癖から思い込み、独断と偏見、バカっぷりを遺憾無く発揮したのは 

『プロレス・スーパースター列伝』 
『空手地獄編』 
『空手地獄編:牙』 

だろう。 

『プロレス・スーパースター列伝』は有名なシーンが多いのも美味しいので入門編としては最高である。 

最初は矢張り『インドの狂虎:タイガージェット・シン』である。 
此処で描かれる『神秘の国:インド』のインド・プロレスの内情は凄い。 



インドのプロレスラーは水牛と戦うのである。しかもコール・タールまみれで。
レスラーよりもワニなんて水生生物だからコール・タールって毒って言うか防腐剤だろ?。水牛は良いけど、ワニはどうなんだ。ワニは。

インドと言えば、インドに行って人生が変わる人が多い事が特徴だが、インド・プロレスも人生が変わりそうなハードワーク・・・って、此れは練習の部類に入るのか? 

実はタイガージェット・シンって米国ではベビーフェイスで(実は端正な顔なので)、伝統的なレスリングをするスタンダードなプロレスラーなんだが、梶原一騎と猪木と新間部長に掛かれば、あの通りである。 

そして、『プロレス・スーパースター列伝』の漫画史上、空前絶後のシーンが此れだろう。 











タイガーマスク(佐山聡)はこんな苦労をしてプロレスをやっていたのか!と泣けてくる。 
やはり、プロレスラーと言うのは並の人間では出来ない。 
ってか、ウサギ跳びって身体に悪いから今の学校では禁止されているし、膝への負担が激しいプロレス家業では辛いのではないか?と思うのだが、梶原一騎先生が言うのだから間違いない(この漫画ではアントニオ猪木も断言しているし)。 



私は小学生の頃に『プロレス・スーパースター列伝』を読んで感動し、其れ以来、如何に新日本・全日本プロレスの試合が、流石に子供の目から見ても 

『八百長』 
『攻撃が当たっててない』 
『卍固めだとか、延髄蹴り、ムーンサルト・プレス等は相手の協力と合意がなければ成立しない』 

と分かりながらも「いやいや!。あのメキシコのプロレス道場を通過した猛者がやっているんだから間違いない!」と頑張ってみていた。 

まぁ、実際にプロレスで『八百長』ではなく『ブック破り』『セメント』になってしまった試合ってのは幾つかあるのだが、やっぱり強いんだよな。プロレスラーって。 
そう言う奴等が本気で殴り合ったら興行として成り立たない。 

だから、総合格闘技って言うモノが出てきたんだろうけども。ただ、アントニオ猪木は実際に強かったらしい。 
全盛期は空手家などが道場破りが来た際に、暇を持て余した猪木先生が相手をする事があったらしいのだが、余裕で勝ってたらしいし(一応、アントニオ猪木は空手経験者)。 
ってか、全盛期に既に糖尿病だったとしても、フルラウンドをやる体力はあるし、場数が違うしなぁ。 
力道山にフルボッコのされた過去もあるし。 



で、余り語られない『カラテ地獄変』『カラテ地獄変:牙』である。 


『カラテ地獄変』は大山倍達をモデルとした「大人向け『空手バカ一代』」と言うか。特攻兵の生き残りで(大山倍達は特攻兵ではなかったが)、ヤケクソになった大東徹源がカラテで世界中を打ちのめしながら走り回る話である。 

①国内→ヤクザが相手 
②米国→元ナチスの生き残りを殺す 
③南米→元ナチスと土人とマシンガン片手に戦う 
④中東→中東情勢とカラテで戦う。 

である。だが、『空手地獄編』は、まだ漫画としての体を成している。探偵アクション的な(死ぬほど低いレベルではあるが)部分も多いし。 

だが、『空手地獄編』は殆ど『ラモーンズ』『ラ・モンテ・ヤング』『トニー・コントラッド』のようなミニマルズムに満ちあふれている。 


①カラテ 
↓ 
②SM 
↓ 
③プロレス 
↓ 
④カラテ 
↓ 
⑤SM 
↓ 
⑥プロレス 


と言う①~⑥を繰り返すばかりである。南米編ではマシンガン片手に原住民達と戦うシーンがあるが、其れくらいなモノで後はカラテとSM、プロレスである。 

流石に全編を読むのは辛くなってくる。本当に『カラテ、SM、プロレス』だけなのである。 

当時、梶原一騎がSMにハマっていた、って言う事情を察しても厳しい。ってか、俺はSMは好きじゃないし。 


その最高峰が『カラテ地獄変:牙』である。 


此れは『カラテ、SM、プロレス』ではない。 

①カラテ 
↓ 
②SM 
↓ 
③カラテ 
↓ 
④SM 

と言う2パターンだけである。『読むレゲエ』『読むUKパンク』『漫画:SKA』と言うか。 

梶原一騎漫画の特徴は「主人公が孤児」がデフォ。 
その孤児が紆余曲折あってカラテに出会う・・・と言うモノなんだが、此の頃には既に大山倍達とは金銭トラブルもあり絶縁しているので内容が屈折している。 

主人公の『牙直人』は感化院に入れられて、其処で少林寺拳法(大雑把に言えば打撃系格闘技)に出会う。其れまでは噛み付き攻撃だけだったのだが、最初のヒロインに少林寺拳法を教えてもらい習得。 

で、その最初のヒロインが感化院のボスにレイプされて、激憤して殺害。 
で、出刃包丁で生首切断。 

裁判でも裁判官に得意のジャンプ力で殴りかかり少年院へ。 

『殺人』 
『生首切断』 
『裁判官への暴行』 
『少年院での激しい乱闘』 

なのに3年で出所する(どう考えても3年では出所出来ないはずだが)。その後はヤクザの用心棒として活躍するのだが、其の際に大山倍達のカラテ(大東徹源のカラテ)に出会い、入門。 
カラテに出会い、屈折した牙直人も少しづつ更生し始める。

そんな折。 

ヤクザに捕まり、大東徹源に救われる。この際の名言が此れである。 



「さては、その女・・・・オマ○コは金ぶちかな?!」

って、何が「さては」だよ。「もしくは」「または」「あるいは」「もしかして」でも良いんだが、「金ブチかい?」って言う意味不明な台詞もワケがワカラン。

梶原一騎の漫画には意味不明な『名言』が多く、最晩年作である『男の星座』でも、こんなシーンがある。


「ツラの印刷が良いからって、大の男をコケにしくさって〜〜〜〜〜!」

って良いな。リスペクトなのか、褒めているのか、認めているのか(英語だとリスペクトと表現される)ワカラン。

「下手な大阪弁で凄むんじゃねぇ!この『京浜蒲田』のドサヤクザが!」

って京浜蒲田をdisっているように見えて、京浜蒲田って都内だしなぁ。確かに標準語とヤクザは相性が悪い。

京都弁とヤクザ
青森弁とヤクザ
沖縄弁とヤクザ
アイヌ語とヤクザ

此れは相性が悪い。

「上司の解放をお願い致します。少年君、君主様、死出の旅に出てはいかがでしょうか?」

ではヤクザ稼業は務まらないんだろうなぁ。嗚呼、大変。




話は『カラテ地獄編:牙』だが、大東先生に助けらるが、其れで何故か破門になる。 

武術家たるもの女に溺れるんじゃねーよ、って言う事らしい。 

で、頑張って破門を説いてもらう為に何処から来たのか、ホモの剣術家と戦い勝利。其れで条件として 

「カラテ普及の為にNYに行ってカラテを広めてこい」 

と言う指令を受ける。 








其処からが酷い。 

ブロンクスやブルックリンが舞台になり、時代的にはDJクール・ハークがHIPHOPのプロトタイプを作った頃なんだが、牙は得意のカラテで大暴れする。
其れで、どう言う経緯だか分からないのだが体重が2tあると言う『2tガレント』と言う人物と戦うのだが、この敵も 

『ホモ』 
『脳梅毒』 
『アル中』 
『黒人』 

と言う、下手すると国際問題や人権団体から激しいバッシングを受けそうな設定である。 


(酷い言われよう)




(気が向いたらノンケだろうと、何だろうと掘る。因みにゲイの恋人がいる設定になっている)


(彼は両刀遣いと言う設定らしい。で、挿入すると『ズズーン!』と言う擬音)

(梶原一騎漫画では女はレイプされたり恥辱されると、娼婦になる設定)


此の辺から「勝利技は目潰し」となる。目潰しと言っても実際は相手の眼球を潰すモノでないらしいし、人体構造上、漫画のように目玉がポコーン!と飛び出すことはないんだが、兎に角、バカみたいに目玉が飛び出す。 


(目玉がポーン)


(目玉がボワッ!)



(目玉がポーン!!)


空想漫画だし、フィクションなのだから、「目潰しだから飛び出るかなぁ」と言う気持ちも分からないまでもない。 
ってか蹴り技でも目玉が飛び出る時点で、何かが崩壊しているのだが。

段々と「これ、目潰しじゃないじゃん!」って言うシーンが増える。 
(絞首刑で目玉がポーン!)

(このオッサンも絞首刑で目玉がポーン!)


(大事な部分にコーラを入れると何故か目玉がポーン!)


(カラテの一撃必殺を考えます。)


(アナルに蹴りで目玉がポーン!!!)


(必殺技で目玉がポーン!!!)




もう、カラテなのか何なのか。ってかカラテって、こう言う格闘技なのか?。 
目玉を取り出すのがカラテなのか?
何処か、此の漫画を思い出す。






因みに、大東徹源は本を出版して、鉄筋コンクリート製のビルと言うか道場。
その道場生がカラテ着で無料で働いたりする。
ブラック企業が知ったら泣きながら欲しがる人材、其れがカラテ家である。


その牙の師匠である大東徹源の扱いも良い。ちょっと立ち上がるだけで此れである。 

ヌオーッ!!!

ヌオーッ!!!


ムオーッ!!!

バァァァァァーン!

ムオーッ!

シーン・・・(此の時代に褌姿)


登場シーンに擬音だと『男の星座』での力道山や大山倍達も擬音で表現されていた。







確か『巨人の星』でも、読売ジャイアンツのスカウトマンの登場シーンが擬音で「バオーン!」だった。
梶原一騎の真っ当な後継者である板垣恵介先生の『餓狼伝』にもアントニオ猪木が、主人公の御見舞をするシーンで、単行本ではカットされていたが連載では、花を持って病室に入るのだが、その時の擬音が

『華ァ!!!!!』

と言う擬音が付いていた。あと、グラップラー刃牙では花を触ると「さも・・・」と言う擬音だとか。

格闘技漫画は擬音が命なんだろうか。

しかし、擬音は良い。

漢たるもの、動いたら擬音の一つや2つは欲しい物である。


だが、此れって殆どギャグ漫画に近いレベルまで行ってしまうシーンも多いのだが本気なんだから恐れ入る。 

(人種差別上等!)

(YMOではありません)

(日米の意識の違い)


で、恐らく当時のチャールズ・マンソン事件を絡めたかったのか狂信的なヒッピーと言うかカルト集団が登場する。梶原一騎作品を読んでいると、梶原一騎が如何に『ヒッピー』みたいな連中を嫌っていたか、よく分かる。
そのカルト教団がハリウッド女優を拉致して助けるのだが「嗚呼、赤軍は梶原一騎の台詞を引用したが、梶原一騎は連中みたいな奴等が嫌いだったんだなぁ」と思わせる・・・しかも、ギャグにしか思えないシーンが出てくる。





もう、最低を超えて「此れは最高としか言いようがないだろうwww」と言うか。 


あと、『四角いジャングル』では実は気が弱いノッポの黒人、ウィリー・ウィリアムスすら知らなかった極真空手の地獄のトレーニングが此れだ!!! 
 














ウィリー・ウィリアムズはカラテに邁進していたし、梶原一騎の事も知っていたが、まさか日本でこう言う紹介をされている事は知らなかったので、wikiによると
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しかし、この武勇伝の真偽をインタビューの一節で尋ねられたウィリーは「それは何の稽古ですか?」と答え、漫画で紹介されているエピソードという説明を受けると「梶原先生のコミックのお話ですか。確かにあの頃の私は若くパワーが有り余っていましたが、自動車を壊したりはしませんよ」と語り創作である事を明かしている。
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となる。第一、本人が「一番、怖かった事」ってのが
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今まで体験した最も怖い事は何か、と尋ねられた際、「大山茂先生の稽古です。とてもハードで、何より先生に叱られる事が怖かった」と答えた。
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大山茂のカラテも酷いモンで、弟子に取材が来たから貫手で畳を貫通させろ、って無理ゲーをやらせて、その弟子の指5本がタコのようにひん曲がったってのがある。
実際、素手で畳を貫通なんて出来ないワケだし、大山茂も、大山倍達もやってない(映像ではやっているけど、特撮)。




梶原一騎の作品には大山倍達、または大山倍達の弟子が大勢、登場するが(其れにより途方もない被害を受けた弟子もいるが)、読み進めながら梶原一騎にとって大山倍達は『父性的存在』だったんだなぁと思う。 

大山倍達って公式戦も、公式記録も一切ない人である。だが、何処か・・・・恐らく人を惹きつける魅力がある人だったんだろう。 
柳川組の組長とも親友だった位だし(空手以外での強さも破格だった。と言うか空手よりも空手以外が強かった人でもある)

で、大山倍達と梶原一騎は金銭面で衝突し(他にも色々な理由があるが、梶原一騎も大山倍達も頭がおかしいので致し方がない)疎遠になるのだが、梶原一騎は大山倍達を正面切ってdisらない。 

『カラテ地獄編』 
『カラテ地獄編:牙』 

は大山倍達への梶原一騎のアンサーとも言えるべき作品なんだが(遠回しに「オマエは人を利用するだけの胡散臭い奴だ」と言うニュアンス)、では大山倍達のカラテを否定はしない。 
カラテ地獄編にしても、カラテは最強で最高で、武人とは大山倍達的な人である・・・みたいなモノである。 


ってか、大山倍達については『男の星座』での描かれ方が死ぬほど面白い。 





(マス・オーヤマは照れると親指だけで逆立ちをする) 



このシーンは笑った。 



梶原一騎の作品に共通するのは「孤独感」である。 

梶原一騎が孤独な人だったか?って言えば違うんだけど(友人も慕う人も、恋人も大勢いた)、親に感化院に叩きこまれた、って言うトラウマなのかもしれないし、一番、認めてもらいたかった父親を早くに亡くしている事も関係しているのかも知れないし(父親が純文学系の人だった)。 

だから、梶原一騎は生涯に渡って 

『矢吹丈』 
『力石徹』 

のような純粋で、気高く、美しく、そして『強いさ』を兼ね備えた人を求めた、と言うか。 

其れが梶原一騎にとっては大山倍達だった、と言うか。 
勿論、大山倍達は純粋でも気品があったワケでも、ムチャクチャに強かったワケでもない(そりゃ強かったんだろう。ヤクザの用心棒をステゴロでやっていた位だから。だが現代格闘技の水準だと3分も持たない)。 

然し、梶原一騎にとっては胡散臭い人だろうと、純粋とは到底、言えない山師のような人物だったとしても、梶原一騎にとっては『大山倍達』と言う存在が父的であり、天皇であり、超えたい壁でもありながらも、超えたくない壁であり、常に甘える事が出来る存在でもあり、だからこそ離反・造反しても許される、と言う存在だったんだろうなぁと思う。 

そう考えるとちょっと寂しい気もしないでもないが。 



然し。 



梶原一騎の作品の荒唐無稽さには一応、裏は取れている。 

梶原一騎はあくまでも純文学路線の人である。生涯に渡って一作も小説を書かなかったが(原作の文章を読んだが、酷い文体なので小説家デビューは難しかったかも知れない)、梶原一騎にとって、目玉がポーン!とか車を破壊するカラテ家とかって、それは文学者にとって 

「見えている」 

と言う光景になる。 


例えば、だが。 

村上春樹の小説には時折、『羊男』と言う謎の人物が登場する。 
羊の着ぐるみを着用し、世間とは断絶した世界にいる。 

こう言う人物を書くには「なんか、居たらおもしそ~、って思って」ではなく、「実際に見た」じゃないと書けない。 

村上春樹(笑)って感じだが、毎年、ノーベル賞候補になり、幾つかの作品が持つ強度は否定しがたい。 
あそこまでの強度のある作品を書く以上は、何処か狂ってない無理な話なワケで。 


梶原一騎が病気で死なずに、長生きしていたらどうだったんだろう?と思う。 

ヘミングウェイのような小説が書けたんだろうか。

梶原一騎

梶原一騎を昨年から研究している。



最初は『あしたのジョー:BL版』に衝撃を受けて、『あしたのジョー』を再度、読み直して、劇場版も見直す事から始まる。

『あしたのジョー』はボクシング漫画のように見えて、実のところ『明日の為の其の一』とかの手紙以外はボクシングについて描かれてはいない。
矢吹丈のようなボクシング・スタイルはギリギリ、戦前の『ピストン堀口』までであり、戦後の日本初の世界チャンピオンである白井義男の頃には消滅している。

で、ピストン堀口はパンチドランカーで廃人になったしな。

まぁ、良くも悪くも『戦前ボクシング』を代表する人だったんだろう。「殴られるので殴り返す」と言う事で相手のパンチの全てを喰らいながら・・・って言う(だが、当時としてはテクニックもフットワークもパンチ力も凄かったはずなんだが、そう言う意味不明な戦法をとっている)。



『あしたのジョー』は前半と後半に分けられる。

前半→不良少年がボクシングに出会うまで。
後半→贖罪の旅

「彼のアイドルであり、恋人である力石徹を殺してしまった自分』
『日々、洗練されていくボクシング・スタイル』

この二点が重要で、野獣のようなボクサーではなく洗練されたテクニシャンと言う二極性。

だが、力石徹と言う十字架の為に、敢えて

①無茶苦茶な強敵(ともすると矢吹丈より1~2ランク上)
②無鉄砲な戦法(ピストン堀口的な)
③異性とのデートすらしない。
④ファイトマネーが入っても気にしない。
⑤力石徹の死後は、あれほど気に入っていたドヤ街とは距離が出来る。

贖罪なのでボクシングでなくても良いのだが、矢吹丈と死んでしまった力石徹を結びつけていたのはボクシングだった。
其れだけでである。
其れだけの為に、ボクシングを続けた。
其れだけの為に、本来はテクニシャンとして悠々と戦えるはずが『力石徹戦』と同じモチベーションとファイトスタイルを維持した。
其れだけの為に、廃人確定だとしても構わなかった。

矢吹丈のパンチ・ドランカーはホセ・メンドーサ戦よりも遥かに前に始まっていたはずである。

本人は其れに気がついていたはずだが、問題は其処ではなかった。


そう言う意味で梶原一騎、及び「ちばてつや」にとっても、日本漫画界においても、だが『少年漫画』と言うモノが、純文学の領域、または凌駕する事は可成り稀なのだが(少女漫画は萩尾望都の登場により純文学となったが)、『あしたのジョー』は、『ブラックジャック』よりも前に、殆ど『初めて』と言っても良い

『漫画が純文学を凌駕した瞬間』

なんだと思う。内容としてもストーリーとしても夏目漱石的と言うか、少年漫画と言うよりは明治から始まる日本純文学である。






そんなワケで。



「梶原一騎って、どんな人だったんだろう?」

と思うのは当然である。と言うか私は何かに興味を持つと、その人を徹底的に調べあげてしまう。
サミュエル・ベケットに興味を持って延々と調べていたら、アンドレ・ザ・ジャイアントの試合まで見る事になる(サミュエル・ベケットとアンドレの家は近所だったんだよな。で、巨大なアンドレがスクールバスに乗れない事を哀れんで、ベケットが小型トラックで送り迎えをしていた)。


で、梶原一騎について調べる。


其処で感じるのは『途方もない文学コンプレックス』と言うか。

『あしたのジョー』は梶原一騎とちばてつや、と言う二人がぶつかり合った爆発みたいなものである。
だが、其れ以前に梶原一騎は相当な文学コンプレックスである。

売れっ子になっていた頃に「ヤリたいこと」ってのが

『へミングウェイの『武器よさらば』みたいな小説を書きたい。』

なんだよな。此のへんが梶原一騎らしい、と言うか。『巨人の星』の父親に代表されるように『古典的な師弟関係』『古典的な日本人』を書くワリには『ヘミングウェイ』と言う『超近代アメリカ文学』と言うか。

だから、『指輪物語』だとか『シェークスピア』だとか「それ、マジで古典じゃん」って言うモノではなく、近代アメリカ文学を通じて、古典的なモノを書きたい、って言う屈折した感じが凄い気がする。


梶原一騎がデビューして、スキャンダルで墜落するまで。

日本に梶原一騎的な思想を持つ人達はいなかった。『よど号ハイジャック事件』では「我々は『あしたのジョー』である!」と言っているが、梶原一騎は政治的思想はなかったし、連合赤軍も全共闘も右翼も左翼も関係なかっただろうし、其れに対して理解・無理解以前だったと思う。

梶原一騎の作品を読みながら、政治的思想が出てくる時は、漫画家が伏線を貼っただけである。


しかし、読みながら正直、苦痛とも思えるモノが多い。


梶原一騎の作品は基本的に


①カラテ
②プロレス
③女
④妙な贖罪(『愛と誠』『天下一大物伝』)
⑤誤解と偏見


である。『愛と誠』や『昭和一代女』のように純文学路線を狙い、格闘技が出てこないモノもあるが(梶原一騎は基本的に純文学志向である)、矢張り『カラテ』『プロレス』は必須である。

その最もたる作品が

『空手バカ一代』
『プロレス・スーパースター列伝』
『空手地獄編』
『空手地獄編:牙』

と言う珠玉の駄作たちである。『空手バカ一代』が果たした功績は凄まじいモノである。
其れまでマイナー格闘技・・・少なくとも全国大会すらなく、沖縄地方の超マイナー格闘技であった空手と言う意味不明な格闘技を2020年の東京五輪の種目にまで持って行き、大山倍達と言う、言ってしまえば単なる『喧嘩が強いオッサン』をスターにしたんだから。

極真空手を調べてみると、ホンっとアホと言うか、そのボスである『大山倍達』の胡散臭さは半端じゃなくて(公式戦は皆無)(伝説の9割以上は嘘)、その弟子達もカラテと言う意味不明な格闘技の事しか考えてないアホばかりなので、中学校を卒業しているのか、どうか怪しい連中ばかりである。


梶原一騎と大山倍達の初対面は、梶原一騎が大山倍達の元に行った際に漬物石を持参して

「此れを割って頂けないでしょうか?」

だったらしい。

そう言う純朴で素朴な人柄だったんだろうなぁと思う。

そう言う純朴で素朴な人だったからこそ、極真空手と大山倍達に心酔出来たし、カラテと言う意味不明な格闘技にも接近したし、
そう言う純朴で素朴な人だったからこそ、初期の大山倍達道場のアホ達に心酔出来たのかも知れない。



長くなりそうだし、続く。

2018年8月10日金曜日

猛暑の改新

バイト先の店長が8月一杯で違う店舗に行くらしい。




で、新しい店長が来るのだが、不安で一杯である。
今の店長も「面倒臭い性格」「ややこしい人」なのだが、そう言う店長に漸く慣れてきた頃に『違う店長』と言うのは私にとっては、可也、ハードルが高い。

そもそも、私は環境の変化に弱い。

高円寺のボロ屋に18年も住んだのも、高円寺に20年近く住んだのも理由は単純に「環境の変化に弱い」からであり、街が好きだったとか家を気に入っていたからではない(高円寺は好きだけど)。

多分、トランペットを殆どジャンクに近い状態で15年も使っていたのも「環境を変えたくない」であり、エフェクターのセッティングを殆ど変えないのも同じ理由である。


そんなワケで『新しい店長』がどんな人なのか不安妄想が爆発する。


①右翼
↓
・何故か職場に三つ揃えのスーツで出勤し、祝日や天皇誕生日、終戦記念日には三島由紀夫のような軍服を着用し、店には何故か国旗が飾られる。

・パソコン店なのに、何故か場所をあけて『戦艦大和のプラモデル』を設置したがる。

・天皇の事を「陛下」と呼ぶ。

・バイトのことを皇軍ならぬ「皇民」と呼ぶ。

・ネット保守系のデモには必ず行くので週末は常に休み。

・中国人、韓国人、北朝鮮を親の仇の如く嫌っているのだが、好きな音楽はHIPHOP。

・「演歌は日本の心」と言って店内のBGMを演歌にする(演歌の成立は1970年代中頃であり、韓国の歌謡曲とのMIX音楽なんだが)。


・三島由紀夫を愛読し、何故か脱ぎたがる。

・「日本民族の誇りを」と言うのだが、趣味がフラダンス。

・酒が入ると、常に日露戦争で死んだ橘周太大隊長について語る。

「8月31日、首山堡を奪取せんとする我が第三十四連隊は、昼夜を分かたぬ悲壮な肉弾攻撃を行い、橘大隊長は自ら先頭に立って敵の硬塁に飛びも込み、白刃を振るって敵兵を切りまくり、ついに自らも倒れたのであります・・・!」

と泣きながら言う。

・鼻歌が『海ゆかば』

・何故かバイトの人達は『教育勅語』を暗唱させられる。

・パソコンの壁紙が昭和天皇

・「好きな女性のタイプは?」と聴くと常に「香淳皇后だね!」と言う(昭和天皇の妻。桁外れのブス)

・「ソウルを火の海に!」とかワケの分からない事を言う。

・南京大虐殺、従軍慰安婦、昭和天皇の戦争犯罪を聞くと烈火の如く怒る。

・沖縄と北方領土に関しては沈黙。

・自衛隊やイージス艦、F-2戦闘機等には無知で『戦艦大和』『ゼロ戦』
『菊花』『紫電改』『人間魚雷:回天』しか知らない。

・暑い日は頭に『日の丸の鉢巻』を巻く。

・頭髪は常に丸坊主。

・仕事中だと言うのにレイバンのサングラスを付けており、サングラスの縁は『べっ甲』。

・店内喫煙

・中古PC店なのに模造品とは言え日本刀を飾るor売る。

・自宅には銃を保管している(旧日本軍の『南部十四年式拳銃』である)

・罵倒の言葉がレイシズム。

・猛暑でも三つ揃えのスーツだが、ウェストポーチも欠かさない。

・激しい右翼のようで、実は実家住まい。

・女性蔑視・軽視

・でも、童貞

・何かあると「あいつは在日だ」「ったく、此れだから朝鮮人は!」と陰口を言う。時として、相手が黒人だとしても(下北沢は観光地)「在日」「朝鮮人」と言う。

・安倍首相を「安倍さん」と親しみを込めて言う。

・『君が代』を聞くと脊髄反射で泣く。

・パワースポットが『靖国神社』

・「今月の売上目標は○○円!達成出来なければ靖国の英霊達に申し訳が立ちません!」と言う。

・風貌が『梶原一騎』そっくり。

・三島由紀夫の影響なのか、セルフ・ヌード写真を撮影しており、それを店に飾る。

・敬礼!のポーズが店内に導入される。

・仕事中、暇な時間があると直ぐに『戦艦大和』のイラストを書き始める(『海ゆかば』を鼻歌に)。

・就任して最初に行うのがバイト達に『神武天皇から始まる歴代天皇の名前と后の暗唱』

・右翼とは関係ないはずなのだが徳川将軍15代も暗記させられる。

・だが、時給は変わらない。




此れは嫌だな、と思う。左翼ってのも嫌なんだけども、右翼と言うかネトウヨや保守系と右翼がゴチャまぜになって、その存在意義が意味不明なモノになっているのと同様に『左翼』ってのも「放射脳」「ただのチンピラ」「時代遅れの学生運動家」「ヒッピー系」「スピリチュアル系」と意味不明であある。

あ、此れも嫌だな、と思うのは


②スピリチュアル系
↓
・トイレに篭ったママなので不審に思うと「宇宙と交信していた」と言う。

・パソコンが売れると「宇宙さん、有り難うございます!」と言う。

・邪馬台国について話し始めると止まらない。

・パソコンは霊的な存在だ、と言い始める。

・電波は邪悪なモノ、と言い始める(店内はwifiがあるのだが)。

・電子レンジは悪。

・でも、iphoneは手放せない。

・雨の日はストレンチウムだとか放射能が恐ろしいので体中をビニールで覆う。

・外食は放射能が恐ろしいので手作り弁当(安心で安全な食べ物)。

・「実は霊が見える」「除霊も出来る」と言う。

・店長なのに出勤してこないので不審に思うと「あの店には霊がいるので怖くて出勤出来なかった」
と言う。

・昼休憩中にUFOを呼ぼうとする。

・中野区(新しい店長は中野区在住)は嘗ては邪馬台国だった、と言う自説を言い始める。

・パソコンが売れないと「ユダヤ資本家の陰謀」「イルミナティの陰謀」「フリーメイソンの陰謀」「300人委員会の陰謀」を切々と語り始める。




此れも嫌だな。あー、死にたい。陰謀論者とか「霊が見える」って言う人は意外と多い。三十路を過ぎた女性は突然、霊が見え始めるし(何のアピールなんだ)、50代を過ぎた男性はユダヤ人陰謀論に行きたがる。第二次思春期なのか?

あと、考えられるのは




③アムウェイ
↓
何故か店長は料理が得意らしく、時折、ステンレスの鍋に入った料理を振る舞ってくれる。
「店長、料理が巧いんですね!」と実際に美味しいので驚いていると、アムウェイの勧誘が始まる。

④宗教
↓
仕事中、暇な時間があると(結構、暇な時間は多い)「KO.DO.NA君は神様とか信じる?」と言う切り口から始まり、熱心なモルモン教だとかエホバの証人の勧誘が始まる。

⑥空手家
↓
・常に『空手バカ一代』を愛読しており、大山倍達を「総帥」と呼ぶ。

・休憩時間には空手の型稽古を下北沢の路上(店の前)で始めてしまうので困る。

・何故か空手道着と鉄下駄で出勤し、挨拶は「押忍」で統一される。

・休日は素手で牛を殺している。

・パソコンが売れない日は苛々する為か10円玉を曲げる。

・空手をdisる(店の前で型稽古はやめてくれ、とか)と「そんな事を言うなら山羊の一匹でも倒してから言え!」と烈火の如く激怒する。

・職場には制服があるのに店長だけ空手道着&鉄下駄で接客。

・仕事中、暇な時間があると瓦を割り始める。

・仕事中、暇な時間があると石ころを空手チョップで割り始める。

・板垣恵介(漫画家)を「板垣恵介先生」と呼ぶ。

・店の前で何処から集めたのか100人組手を始めてしまうので、困る。

・仕事を放棄して山奥に修行に行ってしまう。

空手家は嫌だな、と思う。ふと、極真空手に興味をもって調べてみたら大半が中学を卒業したのか怪しい学歴であり、空手と「強さ」だけを追求した結果、碌でもない人格の人ばかりだった。
空手の人はヤバイ気がする。


⑦詩人
↓
・仕事中、暇な時間があると常にノートに『詩』を書いており、書き終わると其れを読ませてくる。しかも感想を聞いてくる。
・詩は何処か『虎舞竜』や『TMN』に似ているorソックリであるのだが、朗読し始めるので困る。

⑧暗黒舞踏家
↓
もう、此れは嫌だな、と思う。フツーに嫌だ。大半の舞踏家は私生活は普通だが。
店長とは関係ないが舞踏グループ内での上下関係は致し方がないが、『観客』に上下関係があるジャンルは暗黒舞踏だけである。

⑨格言みたいな事を言ってくる
↓
「KO.DO.NA。良いか?世の中には2種類の人間がいる。分かるか?」
「いや・・・男女とかですかね・・・?」
「違う!」
「はぁ」
「パソコンを買う奴と、パソコンを買わない奴だ!」
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「KO.DO.NA君。これ、やっといて」
「あ、はい」
(暫くして)
「終わりました」
「・・・KO.DO.NA君。今日、私は『君を試しました』!」
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「KO.DO.NA君、これをやっといて」
「はい」
(暫くして)
「合格!」
「は?」
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「KO.DO.NA君・・・オマエ、若い頃の俺に似てるよ・・・オマエ・・・化けるよ・・・俺の若い頃とソックリだ・・・」
「は?」
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「KO.DO.NA。良いか?。俺はな?ここまで来るのに7年掛かったんだよ!7年!分かるか?。そうやって、登りつめるとな?・・・見えてくる
風景があるんだよ・・・(ドヤァ・・・)」
「中古PC店の店長で?」
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「今日のオマエ・・・60点!」
「俺が社員のミスをフォローした話、知ってる?」
「早く上がってこいよ・・・!俺のところまで!」
「俺も若い頃は、そーだっだよ」


この「格言系」は嫌だな、と思う。嘗て、務めていた叔父の会社の叔父(社長)がそうだった。
連日、格言みたいなドヤ話をする。
あとは「昔はモテた」と言う話。
ウンザリし過ぎてノイローゼになり、初めて精神的なストレスによる性欲減退を経験した。
最終的には殴って退社しようと思って、怒鳴りこんだら叔父がビビって、退職金を払ってくれて(入社3ヶ月なのに)終わりになった。

ってか、上記のような人だったら、直ぐ側にある『じゃんぱら』に移動するしかないよな、と思う。

店長と、新店長は週1で呑む関係らしく、「変人揃いのウチの店舗内では比較的、まとも」な人らしい。

だが、其れは『友人』だから見せないだけで、実は変な右翼とかスピリチュアルとか格言とかだったら嫌だな、と。


一体、どうなるんだろう・・・・。