2017年5月27日土曜日

夢一夜

この星に来て10年が経った。




5年前に地球が駄目になって、私の家族は可也、早い時期に地球を脱出した方だった。
だから、まだ周辺に住民は多くはなく、掘っ立て小屋と言うか縄文時代の家のようなモノに住んでいる。

地球が駄目になったのは当時、言われていた事(CO2とか海の水が、とか)ではなくて、予想で言えば小さな部類のモノだった。
だから、驚いたし、逃げた時は何も持たずに逃げた。

到着した星には酸素もあり、雨も降る。

10年間の宇宙生活で、若返るのか私は10歳くらいの見た目になってしまった。中身はオッサンだが、見た目は子供。

だが、昼間とか夜、と言う区別があまり無くて、一日中、薄暗い。そのくらいだ。


母が囲炉裏や釜戸の火をいつも消してしまうので、火を付けるのは私の役割だった。

「もう、マッチも多くはないんだから・・・」

「そうやけどねぇ。忘れてしまうんよ」

と言うのだが、長年のクセなのか消してしまう。


いつもマッチで付けていたのでは時間の無駄なのでコンビニでバーベキュー用のライターを買いに行こうと思った。


多くはない住民だが、何故か『ファミリーマート』が上陸している。


この砂漠に毛が生えたような土地でファミリーマート。重力も地球より軽い街に。

「地球外初のコンビニがファミリーマートかよ・・・。あいつら、土地が余ってりゃ何処にでも出店するんだな」

と思う。


日々、地球から脱出してきた人が星に降りてくる。


友人が降りてきた、と言う連絡が来た。

連絡は携帯電話に、だった。


この星から電話を掛けると地球を経由しての発着信となるので通話料が高くなるのだが、私は『カケホーダイ・プラン』に加入しているので連絡が取れた。

5年前に脱出した私達ですら、着の身着のままだったので日々、星に降りてくる人達は宇宙服しか無い。

だが、友人曰く

「ガラケーを使っている人は、メールアドレスとか電話番号がガラケーに入っているから本人確認が出来る」

と言う。

・・・この携帯電話が俺の存在証明なのか・・・と思う。確かにスマートフォンだとメールアドレスを変更しちゃう人が多いもんなぁと思う。

友人は脱出したばかりらしい。


この星に到着するのに地球からロケットに乗っても5年かかるから、再会は5年後だ。


電話を切った後に、故郷である地球が爆発した事を知った。携帯電話のワンセグ機能で爆発する瞬間を観た。

それを観て、何も思わなかった。

ファミリーマートに行くために家を出た。

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